アンモニアソーダ法の最高効率の覚え方を伝授!

難易度:★★★☆
頻出度:★★★★

今回は初の無機分野からの投稿です。

高校化学で扱う工業的製法の中で最も有名かつ重要なアンモニアソーダ法について解説します。

このプロセスは5つの工程に分かれておりけっこう複雑なので、何を覚えれば良いのか迷ってしまうのではないでしょうか。

本記事では何をどのように覚えておけば良いのかを、「ここは覚える」、「ここは覚えなくてOK」と具体的に解説していき、最後に最高効率のまとめをお届けします

入試に出てきそうな計算問題も用意していますので是非チャレンジしてみてください。

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アンモニアソーダ法とは

アンモニアソーダ法は炭酸ナトリウムの工業的製法(製造プロセス)です。

炭酸ナトリウムはガラス工業(ケイ砂と共にソーダガラスの原料になります)をはじめとする各工業分野で広く用いられる重要な化合物です。

ソーダが炭酸ナトリウムのことなので、アンモニアソーダ法という名前は、アンモニアを使って炭酸ナトリウムを製造するプロセスという意味になっています。

また開発したベルギーの工業家ソルベーの名をとってソルベー法とも呼ばれます。

このプロセスは製造(反応)工程が比較的複雑ですが、すべての反応式を覚える必要はありません。

冒頭でも述べましたが、ここからは覚えるべきところと覚えなくてもよいところを強調して解説していき、最後にズバリまとめます

<メモ>
ソーダ(soda)はあいまいな用語であり、他のナトリウム化合物(特に炭酸水素ナトリウムや水酸化ナトリウム)を指す場合もあります。
ナトリウムの英語 sodium が由来です。
ちなみに日常会話で soda と言えば普通のソーダ水を指します。

アンモニアソーダ法のフロー図

アンモニアソーダ法のフロー図(プロセスの流れを表した図)は教科書や参考書によって描き方が様々ですが、当ブログでは次のように描いてみました。

なおこのフロー図は(他の教科書や参考書に描いてある図も)覚える必要はありません

アンモニアソーダ法(ソルベー法)のフロー図

四隅にある太枠で囲まれた物質が全体の反応式を構成する物質です。

また各矢印の色は次に示す各反応式に割り当てられた色と一致しています。

なのでこのフロー図のどの矢印に対応するのかを確認しながら、次の反応式の説明を読んでいただきたいと思います。

アンモニアソーダ法の反応式一覧

反応式を見ないとはじまりませんよね。

まずは一覧を示します。

アンモニアソーダ法(ソルベー法)の反応式一覧

アンモニアソーダ法は5つの工程(反応式)から成り、これらを1つにまとめると一番下の全体の反応式が得られます。

まとめ方は案外簡単で、一番上の①の反応式のみ両辺を2倍し、後はすべての反応式の両辺をただ足すだけです。

出来上がった全体の反応式ですが、これを覚える必要はありません

覚えるべきは何が原料で何をつくりたいか目的物質)です。

そもそもアンモニアソーダ法は炭酸ナトリウムをつくるための工業的製法なので、目的物質が炭酸ナトリウムなのは当然です。

原料は左辺の塩化ナトリウムおよび炭酸カルシウム(石灰石)です。

これら3つを覚えておけば、反応式の両辺でつじつまが合うように考えれば、右辺の残りの1つが塩化カルシウムになることはすぐ分かります。

では一つ一つの工程(反応式)を詳しく見ていきましょう。

①炭酸水素ナトリウムの沈殿生成

①と②がこのプロセスの主反応(目的物質に直結する反応)です。

①では1つ目の原料である飽和塩化ナトリウム水溶液(食塩水)にアンモニアと二酸化炭素を吹き込みます。

するとアンモニアと炭酸の中和が起こり、溶液中にはナトリウムイオン塩化物イオンアンモニウムイオン炭酸水素イオンが(主に)存在することになります。

これら陽イオンと陰イオンの組み合わせの中で、最も溶解度の小さい組み合わせの化合物である炭酸水素ナトリウムが沈殿します。

以上の反応の仕組みを図示すると次のようになります。

アンモニアソーダ法の反応式①(NaHCO3の沈殿生成)

この反応はアンモニアソーダ法の肝となる反応ですので、反応式を覚えておきましょう書けるようにしておきましょう)。

覚えると言っても丸暗記ではなく、上記の仕組み・流れを理解して押さえておくのが最善です。

また左辺のアンモニア二酸化炭素は全体のプロセスの中でリサイクル(再利用)されて供給されます

そして右辺の塩化アンモニウムはアンモニアを回収する⑤の反応に用いられます。

リサイクルもアンモニアソーダ法のポイントなので必ず覚えておきましょう

②炭酸ナトリウムの生成

①で沈殿生成した炭酸水素ナトリウムを分離し、これを加熱(熱分解)することで目的の炭酸ナトリウムを得るのが②の反応です。

②の反応式も暗記必須書けるようにしておくべき)です。

コツとしては、左辺の炭酸水素ナトリウムの係数が2であることを覚えておきましょう。

(この係数2を覚えておけば、5本の反応式をまとめるときに①の反応式を2倍することも忘れないはずです。)

また右辺の二酸化炭素は回収されて①の反応にリサイクルされます。

フロー図をご確認ください。

このことも覚えておく必要があります

<メモ>
炭酸水素ナトリウムはいわゆる重曹で、ベーキングパウダーに用いられます。
②の反応がまさにパンを焼くときの反応で、熱を加えることで発生した二酸化炭素がパン生地を膨らまします。

③炭酸カルシウムの熱分解

③、④に関しては反応式を覚えるというより、炭酸カルシウムを熱分解してを加える、そしてそれがアンモニアの回収につながる、という流れを押さえておきましょう

③の反応では2つ目の原料である炭酸カルシウムを熱分解します。

ここでも右辺の二酸化炭素は①の反応にリサイクルされます。

このリサイクルもやはり覚えておくべきです

④酸化カルシウムに水を加える

③で生成した酸化カルシウム(生石灰)に水を加えると発熱して水酸化カルシウム(消石灰)になります。

これは「ヒモを引くだけでその場で温められるお弁当」の原理として有名な反応なので、特段覚える必要はないと思います。

先ほど述べたように、③と④の流れ炭酸カルシウムを熱分解してを加え、アンモニアの回収につなげるを押さえておくべきです。

⑤アンモニアの回収

いよいよ最後の反応です。

①で得た塩化アンモニウムと④で得た水酸化カルシウムを混合して加熱することでアンモニアを回収します。

この反応の仕組みを次の図で解説しましょう。

アンモニアソーダ法の反応式⑤(NH3の回収(遊離)反応)

塩化アンモニウムは弱塩基(アンモニア)由来の陽イオンであるアンモニウムイオンと、強酸(例えば塩化水素)由来の陰イオンである塩化物イオンから成る塩です。

これに強塩基である水酸化カルシウムを加えると、弱塩基由来のアンモニウムイオンが弱塩基(アンモニア)に戻り遊離します。

強塩基の方が酸と中和する力が強く、すでに中和している弱塩基由来のイオンと立場を逆転しようとすることで起こる、と理解しておけば良いでしょう。

この反応を一般に弱塩基遊離反応と言います。

同様に弱酸由来の塩に強酸を加えると弱酸が遊離しますが、これを弱酸遊離反応と言います。

この弱酸・弱塩基遊離反応は気体の製法でしばしば利用されます。

なお強酸・強塩基由来のイオンは同様の反応を起こそうとしても遊離しません。

また弱酸・弱塩基遊離反応に限った話ではありませんが、気体の発生を促進するためにこの⑤の反応のように加熱をすることがしばしばあります。

話を戻しまして、この反応も反応式を丸暗記する必要はありません

ここまで「ここはこう覚えるべき」とお話ししたことを押さえていただければ、アンモニア回収の元となる物質(左辺の物質)が、①で得た塩化アンモニウムと④で得た水酸化カルシウム(さらに元をたどれば2つ目の原料の炭酸カルシウム)であることは明らかになっています。

(文章だけでは分かりづらいと思いますので、後のまとめを是非ご覧ください。)

左辺の物質が何かということと、右辺でアンモニアが出来ることが分かっていれば、反応式は書けます。

さらに言えば、弱酸・弱塩基遊離反応をマスターしている方なら、左辺の2つの物質を見ただけで「これは弱塩基遊離反応が起こるな!」と気付き、スラスラと反応式が書けるはずです。

<メモ>
弱酸・弱塩基遊離反応は、理系で中~上級の大学を目指す方、化学を得点源にしたい方にはマストと言えます。
当ブログでも出てくるたびに強調したいと思います。

アンモニアソーダ法の優れているところ

ではようやくまとめ、とその前に、アンモニアソーダ法で起こる一連の反応が分かったところで、このプロセスの優れているところについて触れておきます。

まずは原料の二つの物質がどちらも安価であるという点です。

特に飽和塩化ナトリウム水溶液は海水に原塩を溶かしてつくるので、非常に安く済みます(不純物を除去する工程はありますが)。

次にやはりアンモニアや二酸化炭素をリサイクルするという点です。

特にアンモニアはハーバー法で大量合成できるとはいえ、他の原料に比べると高価なのでリサイクルの恩恵は大きいと言えます。

さらに言えば、原料の一つである炭酸カルシウムがアンモニアと二酸化炭素の両方のリサイクルに関与している、というのが非常に頭が良いですよね(フロー図と次のまとめで確認してください)。

覚えることのまとめ

ここまでお疲れさまでした。

反応の仕組みなども詳細まで説明してきたので、かなり文章量が多くなってしまいました。

お待たせしてしまいましたが、ここで冒頭で宣言したまとめを示したいと思います。

今回ももちろん単語カードにまとめました。

アンモニアソーダ法(ソルベー法)の覚えるべきポイントのまとめ(1)

アンモニアソーダ法(ソルベー法)の覚えるべきポイントのまとめ(2)

ここまで「ここはこう覚えるべき」とお話ししたことを簡潔にまとめてみました。

ざっくり言うと、

・目的物質と原料2つ(塩化ナトリウムは①の反応で使う、炭酸カルシウムは熱分解してを加える)を覚える。

・①と②は主反応なので反応式を覚える(書けるようにしておく)。

アンモニア二酸化炭素はリサイクルされる(それぞれのリサイクル元に同じ色の下線を施しました)。

といったところです。

色に意味をつけてふんだんに使っているので、視覚的に覚えていただければ幸いです。

<補足>

このポイントのまとめは、あくまで私が最も効率が良いと思う覚え方です。

しかし「これさえ覚えておけば絶対に大丈夫か」と言われれば、そうは言い切れません。

化学が好きな受験生、化学を得点源とする受験生、それに難関大を目指す受験生は当然のようにすべての反応式が一瞬で書けるはずですし、書けるようにしておくべきです。

ですが丸暗記には意味がなく、ここまでお話ししてきたようなプロセスの流れや反応の仕組みを理解して、「面白いな」と少しでも感じながら身に付けていくことが重要だと思います。

問題に挑戦!

最後に恒例の例題演習です。

アンモニアソーダ法に関して出題される問題の大半は、各工程または全体の反応式を書け、というものです。

が、大問の最後には計算問題も出されることがあります。

対策として何か特別なアプローチが必要かと言うと全くそんなことはなく、通常のモル計算であっさり解けます。

次の例題で確認してみましょう。

アンモニアソーダ法(ソルベー法)の計算問題

<解説>

原料の塩化ナトリウムと目的物質の炭酸ナトリウムとの間の関係は、全体の反応式を見れば一目瞭然です。

塩化ナトリウム「2 mol」から炭酸ナトリウム「1 mol」がつくられます。

用意する塩化ナトリウム水溶液の量を x [kg] とおき、後は単位に注目しながら立式しましょう。

反応に関与するのは塩化ナトリウム水溶液ではなく、あくまで溶質の塩化ナトリウムであることに注意です。

また工業的製法なので単位が [g] ではなく [kg](またはトン [t])と、スケールが大きくなることにも注意です。

アンモニアソーダ法(ソルベー法)の計算問題の解答

ちなみに飽和塩化ナトリウム水溶液(食塩水)の濃度は、20℃ でおおよそ与えられた値となります。

塩化ナトリウムは温度による溶解度の差があまりないのが特徴ですね。

さらにちなむと海水は 2.8%くらいです。

というように、アンモニアソーダ法に関する計算問題は(反応式さえ書ければ!)余裕だと思います。

やはり反応式をきちんと書けることが大事ですので、上で示したまとめ等を有効活用していただければ幸いです。

今回は以上となります。

長い記事でしたが最後までお読みいただきありがとうございました!