熱量保存の法則は2物体の接触以外もあることを例題で解説

難易度:★★☆☆
頻出度:★★★☆

今回は熱量保存の法則を使う例題を解説します。

熱量保存の法則はエネルギー保存則の一種ですが、ワンパターンではなく、問題に合わせて臨機応変に対応することが求められます。

その点についての理解を深めていただければ幸いです。

なお、前回取り上げた熱容量比熱を使って式を立てることになりますので、前回の記事も併せてご確認いただければと思います。

それでは張り切っていきましょう!

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熱量保存の法則とは

熱量保存の法則は特段何か難しいことを言い表すものではありません。

また何か特定のケースや式を法則にしたものでもありません。

ですが高校物理では主に2物体の接触にこの法則を適用します。

まずはこのパターンについて説明します。

2物体の接触

外部との熱のやり取りがない状況下で、高温物体と低温物体を接触させることを考えます。

十分に時間が経過すると両物体の温度は一致し、この状態を熱平衡(温度平衡)と言います。

熱平衡に達するまでに、高温物体が失った熱量低温物体が得た熱量と一致します。

これが熱量保存の法則です。

2物体の接触

高温物体が失った熱量=低温物体が得た熱量

高温物体が失った熱量と低温物体が得た熱量は、それぞれの物体の熱容量 C [J/K] や比熱 c [J/g・K] を用いて計算することができます。

前回の記事で強調した通り、両物理量の単位をしっかり覚えていれば熱量の計算式は容易に立てることができます。

後の例題でも確認しましょう。

熱はなくならない

以上がよく問題にされる熱量保存のパターンですが、一般的な熱量保存の法則はもっともっと漠然としたものです。

熱量保存の法則

孤立系では熱は勝手になくならない

<補足メモ>
孤立系とは外部と物質や熱(エネルギー)のやり取りが一切できない文字通り孤立した系のことです。
また似た言葉に閉鎖系がありますが、こちらは外部と物質のやり取りはできませんが、熱(エネルギー)のやり取りはできる系のことです。
なお外部と物質も熱もやり取りできる系は開放系と言います。

たったこれだけ、当たり前のことですよね。

外部との熱のやり取りがなければ、熱はどこにも逃げないし入ってこない、熱を失う物体があればその分熱を得る物体がある、そういうことです。

先ほどの2物体の接触でも、熱はどこかになくなってはいないですよね。

このように漠然としている当たり前の法則だからこそ、問題を解くときには臨機応変に熱の保存を考える必要があります。

特に複数の物体への熱の分配を考える問題は、一度見ておくとアドバンテージになると思いますので、次の例題で確認してみてください。

熱量保存の問題に挑戦!

それでは予告通り熱量保存の例題にチャレンジしてみましょう。

シンプルな設定にしたので、是非実際に紙に書いて式を立ててみてください。

もちろん後の解説を読んでいただくだけでも十分効果があるはずです!

熱量保存の法則の例題(2物体の接触と熱の分配)

<解説>

容器は断熱材で覆われていますので、外部との熱のやり取りは無視できます。

また容器そのものの熱容量は無視できるので、容器内の水と金属球についてのみ、熱の移動や分配を考えればOKです。

<メモ>
実際の実験では、温度を測るための温度計、水の温度を均一にするための攪拌棒、熱を与えるための電熱線なども容器に入れます。
これらの器具や容器自体も熱をやり取りするので、これらの熱容量も考慮する必要があります。

(1)は高温の金属球と低温の水が熱をやり取りするので、まさに前述の2物体の接触パターンです。

水の温度を聞かれていますが、十分に時間が経過し熱平衡に達したときは水と金属球の温度が一致します。

それぞれの比熱を用いて金属球が失った熱量水が得た熱量を立式し、イコールでつなぎます。

基本的なパターンなので必ず解けるようにしておきたいところです。

熱量保存の法則の例題の解答(1)(2物体の接触、温度の内分点)

ここで注意点があります。

前回の記事で Q = CΔT = mcΔT という(覚えなくてよい)公式が出てきました。

物理では Δ は変化の後-前を表すので、単純にこの式を立てるなら金属球が失った熱量の温度差の項は(t3-t2)にすべきです。

しかし t2 > t3 > t1 (熱平衡時の温度は高温と低温の間に落ち着く)は明らかなので、(t3-t2)を用いると左辺はマイナスになり、間違った答えにたどり着いてしまいます。

このような事態を避けるために、前回の記事でも注意した通り、温度変化というより温度差を用いるようにすると良いでしょう。

つまり、熱量が正になるように問題文に出てくる温度の大小関係をしっかり把握することが重要です。

このような意味でも上記公式は使わない方が良いと思います。
やはり熱容量と比熱の単位に注目して立式することが大事です。

もう1点、少し発展的なコメントをします。

上図下部に書いたとおり、答えの式を見ると、t3 は t1 と t2 を熱容量の逆比で内分した温度になっていることがわかります。

(一様な物体では、比熱に質量をかけたものが熱容量でした。)

本問のように2物体の得た(失った)熱量が同じ場合、熱容量が大きい物質ほど温度変化が小さくなります。

これは熱容量の定義や解答中の式からも明らかです。

よって、逆比内分に従い、熱容量が大きい方の物質の元の温度に平衡温度が偏る、という風に理解することができます。

今回のケースで言えば、例えば金属球の熱容量の方が大きければ、t3 は t2 に近くなります。

続いて(2)です。

投入した木片は水と同じ温度なので、投入時点では水と木片で熱のやり取りはありません。

その後与えられた熱量 Q は水と木片に分配され、両者は最終的に同じ温度に落ち着きます。

それぞれが得た熱量を式にし、その和を Q とイコールでつなぎます。

熱量保存の法則の例題の解答(2)(熱の分配)

水と木片は同じだけ温度上昇しますが、与えた熱量 Q は等しく分配されるわけではありません。

熱容量の比で分配されることに注意しましょう。

この解き方で考えると、「水が得た熱量はいくらか?」などと聞かれても対応することができます。

もしくは水と木片をまとめて1つの物体とみなし、熱容量の和 m1c1 + mc を用いて立式しても同じ答えになります。

<補足>

ここまでの解説・コメント内で熱容量という言葉は何度も出てきましたが、比熱という言葉はほとんど出てきませんでした。

それは、熱容量の方が熱量や温度変化(温度差)との関係が直感的に理解しやすいからです。

前回の記事でも述べましたが、熱容量は質量を内包していると言えます。

熱容量は比熱と異なり、質量抜きに熱量について議論することができる、大変便利な物理量だということを是非覚えておいてください。

まとめ

最後に今回のまとめです。

熱量保存の法則は問題に合わせて柔軟に考えることが大切です。

熱は勝手にはなくならないので、熱の移動・分配を考え、熱容量や比熱を用いて熱量保存の式を立てましょう。

熱量保存の法則のまとめ(1)

熱量保存の法則のまとめ(2)

今回は以上となります。

少しとりとめのないコメントが多かったかと思いますが、何かしら皆さんのヒントになれば幸いです。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!