ダニエル電池の反応は電池式で押さえる。素焼き板の役割も大事。

難易度:★★☆☆
頻出度:★★★★

ダニエル電池は高校化学の電池の王様的存在です。

構造自体は複雑ではないものの、素焼き板起電力など押さえるべきポイントが盛りだくさんです。

今回はそんなダニエル電池について、いつもどおり重要事項を一通り詳しく解説した後、何を覚えれば良いかをまとめたいと思います。

簡単ですが計算問題も用意していますので、是非挑戦してみてください。

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ダニエル電池とは

ダニエル電池はイギリスの物理学者ダニエルが発明した一次電池(充電できない電池)です。

充電できない理由は後ほど詳しくお話しします。

大学受験化学では有名ですが、現在では実用的に用いられることはありません。

<メモ>
充電できる電池は二次電池と言います。
高校化学で二次電池と言えば鉛蓄電池でしょう。
鉛蓄電池に関しては次の記事で解説しています。

ダニエル電池の構造と電池式

それではダニエル電池の中身を詳しく見ていきましょう。

次の図で説明します。

どんな教科書や参考書にも描いてある図なのでお馴染みですよね。

ダニエル電池の構造と電池式

ダニエル電池では負極側と正極側が素焼き板というセパレータによって分けられています。

負極は亜鉛板、負極側電解液は硫酸亜鉛水溶液、正極は銅板、正極側電解液は硫酸銅(II)水溶液です。

したがって電池式は |(-)Zn|ZnSO4 aq||CuSO4 aq|Cu(+) と書けます。

<メモ>
「電池式を書け」という問題は普通見かけませんが、構造を覚えるのに電池式を使うのは有効です。
この記事の最後のまとめでもこの電池式を活用しますので、後ほどご確認いただければと思います。

ダニエル電池の反応式

それではダニエル電池の放電で起こる反応を説明します。

イオン化傾向は「亜鉛 Zn > 銅 Cu」なので、亜鉛の方が陽イオンになりやすく電子を放出しやすいと言えます。

なので亜鉛と銅の組み合わせでは亜鉛が負極になります。

ということで負極では亜鉛が溶け出して亜鉛イオンとなります(酸化反応)。

その際に放出された電子は銅線、抵抗等を通って正極へと流れます。

(電流は電子の流れと逆向き、つまり正極から負極に流れます。)

そして正極ではこの流れてきた電子を銅(II)イオンが受け取って単体になり析出します(還元反応)。

ダニエル電池の反応式

以上の負極と正極の2つの反応式と、これらをまとめた全体の反応式は必ず書けるようにしておきましょう。

全体の反応式は2式をただ足せば完成するので簡単ですね。

<アドバイス>
電池の両極、それと電気分解の両極(陽極と陰極)で酸化還元のどちらの反応が起こるのかは、「電池の負極は還元剤」というキーワードひとつでまとめて覚えることができます。
どういうことか、詳しくは次の記事で解説していますので、是非併せてご確認いただければと思います。

ダニエル電池のポイント

ここまで見てきたように、構造も反応式も比較的簡単なダニエル電池ですが、押さえておくべきポイントが3点あります。

順に見ていきましょう。

素焼き板の役割

ダニエル電池の1つ目のポイントは何と言っても素焼き板です。

素焼き板の役割は2つあり、記述問題で必ずと言っていいほど聞かれます。

1つ目の役割は2つの電解液(硫酸亜鉛水溶液と硫酸銅(II)水溶液)の混合を防ぐことです。

この2液が混ざりあってしまうと、亜鉛板と銅(II)イオンの間で直接電子のやり取りが起こってしまい(上で示した全体の反応式の反応です)、銅線に電子が流れなくなってしまいます。

2つ目の役割は構造の図中にも示したとおり、亜鉛イオンおよび硫酸イオンを通すことで、電気的中性を保つことです。

放電により負極側で亜鉛の溶解が、そして正極側で銅の析出が進むと、負極側では亜鉛イオンが増えて + の陽イオン(亜鉛イオン)が過剰に、正極側では銅(II)イオンが減って – の陰イオン(硫酸イオン)が過剰になってしまいます。

これを防ぐために(電気的中性を保つために)負極側から正極側へは亜鉛イオンが、反対方向には硫酸イオンが素焼き板を通って移動します。

<メモ>
素焼き板を例えばガラス板などに変更すると、このイオンの交換ができないために電気的中性が保てなくなり、電気は流れなくなります。
素焼き板は「電解液自体は通さないがイオンは通す」というダニエル電池にうってつけのちょうど良い塩梅のセパレータということですね。

起電力とその上げ方

ダニエル電池について覚えるべきポイントの2つ目は起電力についてです。

負極と正極の間に生じる電位差(電圧)を起電力と言いますが、ダニエル電池の理論上の起電力は 1.10 V です。

余裕がある方はこの値も覚えておきましょう。

そして値よりも入試で聞かれるのは、この起電力を大きくするにはどうしたら良いか、ということです。

まず言えるのは、負極側の硫酸亜鉛水溶液の濃度を薄く、正極側の硫酸銅(II)水溶液の濃度を濃くすることです。

負極側では溶け出してくる亜鉛イオンの初期量を少なくしておき、正極側では析出する銅(II)イオンの初期量を多くしておこうということですね。

また両極に用いる金属のイオン化傾向の差を大きくすることも起電力の増加につながります(金属を変えると厳密にはダニエル電池ではなくなってしまいますが)。

例えば正極を銅板から銀板に変える(これに伴い正極側電解液は銀塩の水溶液に変更する)と、起電力は 1.10 V から 1.56 V まで増加します。

充電できない理由

ポイントの3点目はダニエル電池が充電できないという事実、そしてその理由です。

前述のとおりダニエル電池は充電できない一次電池です。

そもそも電池の充電とは放電の逆反応であり、逆反応を起こして電池内を元の状態に戻し、再び放電できるようにするわけです。

ダニエル電池の場合、負極側で溶け出た亜鉛イオンを再び電極に析出させることは困難です。

充電時、負極側では電子を得る還元反応が起こることになりますが、電解液中には亜鉛イオンよりも電子を受け取りやすい水が存在するので、水が電子を得て水素が発生する反応が主に起こってしまいます。

こういうわけでダニエル電池は充電できないのです。

以上がダニエル電池のポイント3つです。

それぞれ原理を理解して、説明できるようにしておきましょう!

ダニエル電池の計算問題に挑戦!

まとめに入る前に、ダニエル電池の計算例題とその解答を示しておきます。

ダニエル電池は反応が単純なので計算問題も容易であることがほとんどです。

自信を持って取り組んでみてください。

問題

ダニエル電池の放電で正極の質量が 3.2 g 増加した。
流れた電気量は何 C か、整数で答えよ。
ただし原子量は Cu = 64、ファラデー定数は 96500 C/mol とする。

<解答>

正極の質量増加は析出した銅によるものです。

まず析出した銅のモルを算出し、次に正極の反応式の係数比を用いて流れた電子のモルを求めます。

あとはファラデー定数を使って電子のモルを電気量に変換すれば終了です。

下図に示したように単位に注目して式を立てましょう。

ダニエル電池の計算問題の解答

なおダニエル電池の場合、それぞれの極で反応する亜鉛(イオン)と銅(イオン)のモル比は1:1であり、亜鉛と銅は原子量が1違いなので、亜鉛の溶解による負極の質量減少分と銅の析出による正極の質量増加分は大体同じ値となります。

このことを覚えておくと、計算結果の妥当性を考えるときに役立つかもしれません。

まとめ

ここまでお疲れさまでした。

最後にダニエル電池のまとめです。

構造を電池式の形で押さえておけば反応式はその場で書けます。

あとはポイントを個別に覚えておけば安心です。

その中でも一番重要なのは素焼き板の2つの役割であり、記述問題対策として言葉で説明できるようにしておきましょう。

次のように単語カードにまとめておきますので、適宜ご利用ください。

ダニエル電池のポイントまとめ(1)

ダニエル電池のポイントまとめ(2)

今回はここまでです。

最後まで読んでいただきありがとうございました!