【必ず描ける!】エネルギー図を描いて反応熱を求めるコツ

難易度:★★★☆
頻出度:★★★☆

ヘスの法則に基づいてお目当ての反応熱を求めるとき、エネルギー図で解くと視覚的に解けてスマートですよね。

でもエネルギー図を自力で描くのは苦手!という方も多いはず。

今回はどんな点を意識してエネルギー図を描いたら良いか、ポイントを整理してお伝えします。

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エネルギー図とヘスの法則

まずはじめに、そもそもエネルギー図とは何か、説明させてください。

エネルギー図は物質(または状態)が持つエネルギーの差を表す図です。

次のイメージ図をご覧ください

エネルギー図とヘスの法則の例

この図は、架空の物質(または状態)の組「A+B+C」、「D+E」、「F+G」がそれぞれ持つエネルギーの差を表しています。

エネルギー図で上にある物質(または状態)ほどエネルギーを多く持っていると理解できます。

ここでの注意点は、エネルギー図は相対的な図だということです。

何か絶対的な(数学のグラフの原点のような)基準があるのではなく、あくまでそれぞれの物質(または状態)のエネルギーの差を表しています。

そしてこの物質間(または状態間)のエネルギーの差、というのは化学では非常に重要です。

何故ならエネルギーの差は反応熱でもあるからです。

例えば、「A+B+C」から「D+E」をつくる反応を起こすと、持っているエネルギーが下がるので、Q1 だけ発熱します。

逆に、「F+G」から「D+E」をつくる反応を起こすと、持っているエネルギーを上げなくてはいけないので、Q2 だけ吸熱します。

<エネルギー図での反応の方向と発熱・吸熱>
下向きの反応は発熱
上向きの反応は吸熱

さて、エネルギー図の便利なところは、次のヘスの法則総熱量保存の法則総熱量不変の法則を視覚的に扱うことができるという点です。

ヘスの法則

反応熱の総和は変化する前後の物質の状態だけで決まり、途中の経路によらない。

ヘスの法則によれば、例えば上図において、「A+B+C」から「D+E」を経由して「F+G」をつくる場合も、「A+B+C」から直接「F+G」をつくる場合も、反応によって生じる(または吸収される)熱の合計は変わりません。

つまり、反応熱に関して図中に示したような等式が成り立ちます。

このことを使って、反応熱を求める問題を図的に解くことができるのです。

エネルギー図の描き方

エネルギー図とその利用法が分かったところで、遂に描き方の説明に入っていきます。

これから述べる2点を意識するだけで、きっと自力でエネルギー図が描けるようになりますよ!

エネルギーの目安を押さえる

まずは物質や状態の持つエネルギーの目安を覚えておきましょう。

一般に、次のような目安を念頭に置いてエネルギー図を描きます。

エネルギー図を描くときに意識しておくべき物質の保有するエネルギーの目安

左側の、気体・液体・固体のエネルギーの順番は違和感なしかなと思います。

気体はビュンビュン飛びまわるのでエネルギーは高く、固体は密集して固まっているのでエネルギーは低く、液体はその中間です。

右側に関しては、図中下部にも書いたとおり、バラバラなものほど高い、くっつくと安定して低いと覚えておきましょう。

もちろん例外もありますが、基本はこのイメージ・目安通りにエネルギー図を描くと成功します。

経路を2つ、両矢印で描く

エネルギーの目安を意識するのと同時に、もう1つ意識してほしいのが「経路を2つ、両矢印で描く」ということです。

まず「経路を2つ」というのは、上で説明したヘスの法則を用いる際には、異なる2つの経路が必要だからです。

当たり前のことのように思えますが、これを意識できていないことが、エネルギー図で問題が解けない原因になっていることも多いです。

ヘスの法則を使うために後はどことどこをつなごうか、と考えながら、2つの経路をつくるのです。

次に「両矢印で描く」という点ですが、これも小さいことのようでとても重要です。

よく教科書や参考書で、エネルギー図の矢印を普通の矢印(↑ や ↓)で描いているのを見かけます。

が、これは混乱の元なのでやめましょう

たしかに前述のように、下向き(↓)の反応は発熱、上向き(↑)の反応は吸熱ですが、エネルギー図はエネルギーの差を表す図なので、図を描くときには矢印の向きは関係ありません。

向きのある矢印で描くと、ヘスの法則を使って計算するときに、矢印の向きに気を取られて反応熱のプラスマイナスが気になり、変な計算ミス・ケアレスミスを起こしかねません

なので矢印は必ず両矢印で描きましょう

発熱か吸熱かを聞かれた時だけ、矢印が上向きか下向きかを考慮すればよいのです。

エネルギー図を描くときの注意点

そしてあと2点、エネルギー図を描くときの注意点をお伝えしておこうと思います。

【注意1】係数に注意

熱化学方程式を書くときは係数に要注意ですが、エネルギー図でも係数を間違えないように注意すべきです。

せっかくエネルギー図が描けても係数が間違っていると後の計算結果が合わなくなります。

化学に慣れてくればくるほど反応式の係数の確認は軽視しがちですので注意しましょう。

【注意2】計算結果が負になったら…

先ほど強調したようにエネルギー図は両矢印で描きますので、反応熱は必ず正の値で書き込みます。

なので未知の反応熱を書き込む際も正と仮定して書き込むことになります。

物理や化学では未知のものは正と仮定するのが鉄則ですよね。

このブログでいつも強調している通りです!

ではその未知の反応熱を求めるためにヘスの法則で計算をし、もし計算結果が負になったら、それはどういうことでしょう。

それは目安にしたがって自分で設定したエネルギーの順番が逆だった(吸熱だった)ということです。

だからといってエネルギー図を描き直したりする必要はないですよ。

マイナスの結果を自信を持って答えればいいのです。

(後の例題の補足で具体例が出てきます。)

<コメント>
ここまでエネルギー図を描くときに意識すべきことを説明してきましたが、やはり慣れも重要です。
慣れないうちは、先に熱化学方程式を書いて登場する物質やその係数などを確認して、それから上の目安に従って物質を配置すると良いでしょう。

エネルギー図の描き方のまとめ

例題を解く前に、エネルギー図の描き方のまとめを単語カードにつくっておきます。

これを意識しておけばきっと自力でエネルギー図が描けるようになりますよ!!

エネルギー図を描くときに意識すべきことのまとめ(1)

エネルギー図を描くときに意識すべきことのまとめ(2)

 

 

問題に挑戦!

それではいよいよエネルギー図を描く例題に挑戦してみましょう。

問題

二酸化炭素(気体)、水(液体)の生成熱はそれぞれ 394 kJ/mol、286 kJ/mol である。
またメタン(気体)の燃焼熱は 890 kJ/mol である。
メタン(気体)の生成熱を整数で求めよ。

<解答>

与えられている反応熱は生成熱と燃焼熱です。

生成熱は単体と化合物、燃焼熱は化合物と酸化物の話ですから、単体、化合物、酸化物をエネルギー図に配置すれば良いと分かります。

エネルギーの目安に従ってこれらを配置しましょう。

前述のように、慣れないうちは先に熱化学方程式を書いて物質とその係数などを確認した後で、上の目安に従って物質を配置するのが安全です。

なお1段目と2段目のように共通の物質が含まれる場合がよくあることも知っておくと良いでしょう。

あとは単体から酸化物への変化について、化合物を経由する場合と経由しない場合を考えます。

2つの経路を意識していればこのことに気付けるでしょう。

最後にヘスの法則で計算すれば答えが求まります。

エネルギー図で反応熱の問題を解く例題の解答 ver.2

<補足>

本問で出てきたメタンに加え、エタン、アセチレンは基本的な炭化水素なのでこの種の問題でよく登場します。

教科書の例題や定期テストなどでも目にするのではないでしょうか。

この中でアセチレンのみ、生成熱が吸熱となります。

上で挙げた2つ目の注意点を体感できるかと思いますので、是非エネルギー図を描いて求めてみてください。

必要な数値は、この問題でも使った、二酸化炭素(気体)と水(液体)の生成熱、それぞれ 394 kJ/mol、286 kJ/mol と、アセチレンの燃焼熱 1302 kJ/mol です。

(-228 kJ/mol になれば正解です。)

 

もっと簡単な裏ワザ

長い記事でしたがここまで読んでいただきありがとうございました。

エネルギー図の「いろは」を説明してきましたが、個人的には熱化学の問題は、早くて楽な「右-左」の公式で解くのがオススメです。

次の2つの記事で「右-左」の公式について詳しく解説していますので、是非参考にしていただければと思います。

今回はここまでです。

お疲れさまでした!

また当ブログの別の記事でお会いしましょう。