中和熱の計算問題はグラフを外挿して解く!理由も詳しく解説!

難易度:★★☆☆
頻出度:★★☆☆

今回は化学の「酸と塩基」および「熱化学」から、「中和熱の計算問題」を取り上げます。

有名な形のグラフが登場するのですが、初見だと何をしていいか分からなくなりがちです。

是非この機会に一度触れておいていただきたいと思います。

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そもそも中和熱って何?

まずはじめに、中和熱について簡単に説明します。

定義は次のとおりです。

中和熱

酸と塩基が反応して水 1 mol が生じるときに発生する熱量

中和熱の定義

左辺に出てくる aq は多量の水を表すので、水溶液と捉えてください。

例えば HCl aq は塩化水素の水溶液、つまり塩酸を表します。

なのでここでは水溶液中の水素イオンと水酸化物イオン、という意味で、これらが中和して水になると 56.5 kJ/mol の熱が生じます。

56.5 は覚えておこう

一般に、希薄な強酸と希薄な強塩基の中和熱は、酸や塩基の種類によらずほぼ一定で、56.5 kJ/mol となります。

中和の本質は、水素イオンと水酸化物イオンから水が生じる、という反応なので、酸や塩基の種類によらないのです。

ただ、弱酸・弱塩基、また希薄でない溶液の中和熱はこの値からずれてしまいます。

それは、酸と塩基を混合して中和熱を測定するときに、電離による熱のやり取りなども測定してしまうからです。

強酸・強塩基は希薄水溶液中で完全電離とみなせます。

問題に挑戦!

中和熱が何か分かりましたので、早速例題を見てみましょう。

中和熱を計算する例題

これこれ、このグラフが有名なんです。

一般に、中和熱や溶解熱などで水溶液が温められる設定で、比熱を用いて発生した熱量を求める場合にこのグラフが登場します。

これから紹介する理由や考え方を是非覚えておいてください。

グラフの見方

では何故このような形のグラフになるのかを解説していきます。

次の図をご覧ください。

中和熱の計算問題の解き方の説明図(外挿することがポイント)

塩酸(強酸)と水酸化ナトリウム水溶液(強塩基)を混合すると、ただちに中和熱が発生し、その熱で水溶液が温められます。

しかし、水溶液の温度上昇は一瞬で起こるものではありません。

水溶液が温まるのに時間がかかるため、温度は徐々に上昇してきます(図中①)。

そして中和熱を使いきって温度上昇が止まった後は、今度は放熱により少しづつ温度が低下していきます(図中②)。

以上の理由により、こんな形のグラフになるのです。

さて、中和熱により水溶液の温度がどれだけ上昇したかが分かれば、比熱を用いることにより、中和熱の熱量が計算できます。

ここで温度上昇を、グラフが右肩下がりになり始める温度、引くことの元の水温、つまり今回で言えば、

(温度上昇)= 31.0 ℃ - 25.0 ℃ = 6.0 ℃

とするのは間違いです。

何故なら①の部分で水溶液の温度が徐々に上がっている間も、放熱により中和熱が損なわれているからです。

外挿がカギ!

このように中和熱による温度上昇は徐々に起こるので、グラフをそのまま読むのでは不十分です。

そこで、温度上昇が瞬間的に起こると仮定し、グラフの②の部分の直線を混合開始の時間まで外挿し、交点の温度まで上昇したと考えます。

つまり、

(温度上昇)= 31.6 ℃ - 25.0 ℃ = 6.6 ℃

とします。

この、グラフを外挿し瞬間的に温度が上昇したと仮定する考え方は非常に重要ですので覚えておきましょう。

解答はこちら

中和熱によって上昇した温度が分かれば、後は簡単です。

比熱を用いて発生した熱量を計算し、それを中和により生じた水のモル数で割ればOKです。

※冒頭で述べた中和熱の定義を確認してください。

解答を示します。

中和熱の計算問題の解答

当ブログの化学計算でいつも強調しているように、単位に注目しながら計算式を立てましょう!

答えは実験誤差などにより、 56.5 kJ/mol を少し下回ることが多いです。

注意点をいくつかコメントしておきます。


・酸や塩基のモルに価数をかけることで、水素イオンや水酸化物イオンのモルになります。価数のかけ忘れに注意しましょう。

・今回は酸と塩基が等量で中和しましたが、どちらかが過剰な場合は、水素イオンと水酸化物イオンの少ない方のモル分の水が生じます。いつも 1 対 1 で中和するという先入観を持たないように注意しましょう。

・比熱は単位の分母に g があるので、水溶液の質量をかけることになりますが、混合後の合計質量をかけることに注意しましょう。その際、体積から質量に換算するのに密度を用います。

まとめ

今回は中和熱の計算問題で出てくるグラフの見方を解説しました。

いつも通りポイントを単語カードにまとめておきますので、是非ご活用ください。

中和熱の計算問題の解き方のまとめ(1)

中和熱の計算問題の解き方のまとめ(2)

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!