【受験化学】鉄の製錬:銑鉄への流れとコークス・石灰石の役割

難易度:★★☆☆
頻出度:★☆☆☆

今回は鉄の工業的製法(鉄の製錬)について解説します。

鉄の製錬プロセスは他の工業的製法と比べると堅いイメージ(鉄だけに)で、少し取っ付きにくいのではないでしょうか。

しかし何を覚えれば良いのかが分かれば案外何とかなります。

そこで本記事では鉄の製錬の概要を詳しく説明した後、覚えるべき事項を簡潔にまとめます。

今回も情報量と分かりやすさ重視で様々なコメントを織り交ぜていきますので、是非最後までお付き合いください。

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鉄の製錬とは(溶鉱炉と転炉の2ステップ)

製錬とは原料の鉱石から金属を取り出す操作のことです。

鉄の製錬ではまず、溶鉱炉で原料の鉄鉱石を還元することで銑鉄(せんてつ)を得ます。

鉄鉱石は酸化鉄を中心とした混合物ですが、主成分は赤鉄鉱酸化鉄(III)Fe2O3)と覚えておきましょう。

不純物としては二酸化ケイ素などが含まれます。

この不純物の除去の仕方が(後ほど)1つのポイントとなります。

そして銑鉄は不純物として炭素を4%程度含む鉄のことで、硬くてもろいのが特徴です。

(炭素の他にケイ素、リン、硫黄などの不純物も少量ですが含まれます。)

<メモ>
銑鉄は主に鋳物(いもの:融解させて鋳型に注いで固めた鉄製品)に用いられます。

次に転炉で銑鉄の内部に空気を吹き込み、余分な炭素などを燃焼させて除去します。

すると炭素含有量が2%以下の(こう)が得られます。

鋼は硬くて強いのが特徴です。

<メモ>
鋼は「鋼鉄(こうてつ)」や「はがね」とも呼ばれます。
非常に丈夫なことから、建材などに用いられます。

さて、このように鉄の製錬は溶鉱炉と転炉の2ステップですが、大学入試では溶鉱炉での反応が問題にされます

溶鉱炉内部で鉄が原料の鉄鉱石からどのように変化して銑鉄になるのかを理解しておくことが重要です。

一方、転炉での反応はただの燃焼反応ですし、テストで聞かれることはほとんどないでしょう。

どういう工程なのかを覚えておく必要はありますが、溶鉱炉の方に重点を置く勉強法で何ら問題ありません。

<メモ>
製鉄に用いられる溶鉱炉を高炉とも呼びます。

溶鉱炉での反応(鉄鉱石→銑鉄)

ということでここからは、溶鉱炉内部の様子を詳しく見ていきましょう。

次の図をご覧ください。

なお後ほど反応式一覧も示します。

鉄の製錬(溶鉱炉内の様子)

酸化鉄の還元には高温が必要です。

そこで熱した空気を炉の下部から上部へと送り、炉全体を加熱します。

熱風の入り口に近い下部ほど温度が高くなるので、炉内を下に行くほど強い反応が起こることになります。

原料の鉄鉱石は、コークス石灰石と共に炉の上部から供給されます。

するとまず、コークスが燃焼して一酸化炭素になります

<メモ>
コークスから一酸化炭素が生じる反応は2通りあります。
1つはコークスが不完全燃焼して一酸化炭素を直接生じる場合で、もう1つはコークスの完全燃焼で生じた二酸化炭素が高温のコークスと接触して一酸化炭素を生じる場合です。
後で示す反応式もご確認ください。

一酸化炭素は還元性をもつので、炉の上部から下部にかけて鉄鉱石中の酸化鉄を徐々に還元していきます。

還元は、酸化鉄(III)→四酸化三鉄→酸化鉄(II)→単体の鉄(銑鉄)の順序です。

上図中にかっこ書きで示しましたが、Fe の酸化数がたしかに減少していくことをご確認ください。

どんどん酸素(O)が取れていくイメージも持っておくと良いでしょう。

何はともあれ、これで炉の下から融解(溶融)した状態の銑鉄が得られます。

これが転炉に送られ、前述の操作でになります。

<メモ>
四酸化三鉄は酸化鉄(III)と酸化鉄(II)を足し合わせたもの(Fe2O3 + FeO = Fe3O4)と捉えられます。
なので四酸化三鉄内の Fe の酸化数は +3 と +2 の間と考えておけば良いでしょう。
複雑な構造なので酸化数が聞かれることはまずないと思います。

さて、鉄鉱石、コークスと共に投入される石灰石が担う役割も重要です。

石灰石は鉄鉱石中の二酸化ケイ素などの不純物と反応し、スラグと呼ばれる化合物を生じます。

スラグは銑鉄とは別に炉から取り出され、これにより鉄鉱石中の不純物が除去されることになります。

(石灰石は塩基性なので、酸性の二酸化ケイ素などとは相性が良いです。)

なお石灰石が二酸化ケイ素と反応した場合はケイ酸カルシウム(主に CaSiO3)を生じますので、「代表的なスラグ = CaSiO3」と一応記憶しておきましょう。

<メモ>
スラグはセメントの原料になります。
スラグからつくられるセメントをスラグセメント、または高炉セメントと言います。

溶鉱炉内で起こる反応式一覧

以上が溶鉱炉内で起こる現象です。

それでは予告どおり反応式一覧をお示しします。

鉄の製錬の反応式一覧(溶鉱炉での反応)

コークスの燃焼の反応式は、正直言って重要ではありません。

その場でもつくれるくらい簡単なものですから。

問題は鉄鉱石(主成分の酸化鉄(III))から銑鉄までの反応式です。

が、一酸化炭素により酸化鉄(III)から徐々に還元されていくという流れさえ押さえておけば、各式の係数合わせは特段難しくありません。

(各式において、酸化鉄を還元する一酸化炭素は逆に酸化されて二酸化炭素になる、ということも基本的ですよね。)

そして①~③の式をまとめて全体の反応式とする操作も特に難しくはありません。

中間生成物の四酸化三鉄と酸化鉄(II)を消すように、②式を2倍、③式を6倍してから全式の両辺を足し、最後に3で除するだけです。

といった具合に、鉄の製錬では「流れ」がすべてであり、反応式の丸暗記は不要と言えます。

なお、スラグの組成は様々ですから、スラグ生成の反応式を覚える必要はありません。

まとめ

ここまでの内容をまとめておきたいと思います。

当ブログではいつも単語カードにまとめを作成していますので、今回もカード1枚にさくっとまとめます。

鉄の製錬は溶鉱炉と転炉の2段仕様ですが、溶鉱炉内での流れを知っておけば大丈夫です。

原料の鉄鉱石が徐々に還元されていく過程と、一緒に入れられるコークスと石灰石が担う役割を押さえておきましょう。

コークスは還元剤となる一酸化炭素の供給係石灰石は不純物除去要員でスラグの元でした。

鉄の製錬のまとめ(1)(溶鉱炉での反応)

鉄の製錬のまとめ(2)(溶鉱炉での反応)

問題に挑戦!

最後に復習用の簡単なクイズをつくってみました。

勉強の合間にでも軽くチャレンジしていただければ幸いです。

一部、今回紹介していない鉄に関する知識も入っていますので、腕試しにもご活用ください。

問題

鉄に関する次の各問いに答えよ。
1. 鉄の製錬過程で得られる銑鉄の特徴を簡潔に答えよ。
2. 鉄の製錬について、酸化鉄(III)から銑鉄を得る反応式(1つの式)を書け。
3. 鉄の製錬において、鉄鉱石内のケイ酸塩などの不純物が石灰石と反応してできる化合物を何と言うか。
4. 黒さびの主成分は何か。
5. 水溶液中における鉄(III)イオンの色を答えよ。

<解答>

1. 硬くてもろい

2. 反応式一覧中の全体の反応式が答えです。

3. スラグ

4. 四酸化三鉄

黒さびの主成分が四酸化三鉄で、赤さびの主成分が酸化鉄(III)です。

また前者は磁鉄鉱、後者は赤鉄鉱の主成分でもあります。

5. 黄褐色

これは知識として覚えておきましょう。

ちなみに鉄(II)イオンは淡緑色です。

以上で今回はおしまいです。

最後までお付き合いいただきありがとうございました!