力のモーメントの求め方と剛体の静止条件:つり合いの立式では未知数の集中に注目

難易度:★★☆☆
頻出度:★★★☆

今回は力のモーメントについて解説します。

モーメントは苦手な方が多い要注意分野ですが、ひとたびコツを掴むことができれば、問題がスラスラ解けて安定した得点源になります。

モーメントのおすすめの求め方から剛体の静止条件を使う例題まで、すべてをお話しします。

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力のモーメントとは

モーメントは物体を回転させる能力を表す指標です。

普通の力学の問題では物体の回転は考えませんが、対象が(かたくて変形せず)大きさの無視できない剛体の場合、回転も考慮する必要があります。

その際にモーメントを計算して、剛体が静止する条件を求めたりするわけです。

用語の確認

モーメントの具体的な話に入る前に、まずは用語の確認をしておきましょう。

下図をご覧ください。

力のモーメント(用語の確認)

回転の軸となる点を支点、力がかかる点を作用点、力がかかる方向を(逆向きも含めて)作用線、支点から作用点までの距離をうでの長さと言います。

どれも基本的ですが重要な用語なので、まずはこれらをしっかりと覚えるところからスタートです。

力のモーメントの性質

モーメントには重要な性質が2つあります。

次の図をご覧ください。

力のモーメントの性質(作用線上での移動、モーメント0の2パターン)

1つ目、作用線上で力を移動させてもモーメントは変わりません

2つ目、力が支点に働く場合、また力の作用線が支点を通る場合モーメントはゼロとなります。

力のモーメントの求め方は「力の分解」がおすすめ

モーメントは「力の大きさ)×(作用線に垂直なうでの長さ」で求められます。

なので例えば上の「用語の確認」で示した図の場合、F×L ではモーメントは求められません。

うでの長さが作用線に垂直になっていませんから。

そこで次の2つの方法のどちらかで(正しい)モーメントを求めます。

1つ目は、うでの長さが作用線に垂直になるまで、作用線上で力を移動させる方法です。

これは前述のモーメントの性質の1つ目を利用した方法です。

ですが個人的にはこの方法はあまりおすすめしません。

力の移動や垂直なうでの長さの作図のために、図にごちゃごちゃと書き込まなくてはならず、ケアレスミスや計算ミスが多くなるからです。

私がおすすめするのは2つ目の方法、力を分解する方法です。

次の図をご覧ください。

力のモーメントの求め方

「用語の確認」で示した図中の力 F のモーメントを求めてみます。

まずは力 F をうでに水平な成分 Fcosθ と垂直な成分 Fsinθ に分けます。

この際、いつも水平成分が cosθ、垂直成分が sinθ になるわけではありません。

θ としてどこの角度が与えられているか、どちらが cos でどちらが sin か、慎重に考えて間違えないようにしましょう。

さて水平成分 Fcosθ はその作用線が支点を通っているのでモーメントはゼロです(前述のモーメントの性質の2つ目より)。

次に垂直成分 Fsinθ はうでの長さ L と垂直なので、単純に両者をかけるだけでモーメントが求められます

結果として力 F のモーメントは FLsinθ と計算できます。

また、モーメントを求める際は「時計回り」か「反時計まわり」かも必ず意識しておきましょう。

<コメント>
力の移動、力の分解、どちらでも同じ結果となりますが、くどいようですが個人的には力の分解の方がミスが少ないと思います。
これら2通りの方法は使い分けるというより、どちらか自分に合う方に習熟し、いつも同じ方法で自信を持って確実に解くことが大事です。

力のモーメントのつり合いと剛体の静止条件

そして力のモーメントを計算することで剛体の静止条件を求めることができます。

剛体の静止条件は次の単語カードにまとめたとおりです。

剛体の静止条件のまとめ(1)

剛体の静止条件のまとめ(2)

まず剛体に作用する力がつりあっていないと平行移動してしまうので、「力のつりあいの式を立式する必要があります。

さらに回転しない条件として、「モーメントのつり合いの式」つまり「(反時計回りのモーメント)=(時計回りのモーメント)」を立てます。

このときに1つポイントがあります。

モーメントを計算するときの支点(中心)はどこでも構いませんが、なるべく未知の力が多く集まる点を選びましょう。

モーメントの性質の2つ目として述べたとおり、支点に作用点がある力のモーメントはゼロとなります。

「モーメントのつり合いの式」中の未知数をなるべく少なくした方が「力のつり合いの式」との連立計算が楽になるので、なるべく多くの未知の力が作用する点を支点にする方がお得です。

問題に挑戦!

それではここまでの内容を次の例題で実践的に使ってみましょう。

非常によくある、棒をひもで壁に固定する例題です。

力のモーメント、剛体の静止条件の例題

<解答・解説>

力のモーメント、剛体の静止条件の例題の解答

まずは棒に働く力をすべて図示します。

重力 mg とひもの張力 T は問題ないと思いますが、少し難しいのが壁から棒に働く力、垂直抗力と摩擦力です。

垂直抗力 N は面(本問では壁)に対して垂直に働くので、本問では地面から見ると水平に働きます。

次に棒の「静止」条件を考えるので、摩擦力としては「静止」摩擦力が働きます。

向きに若干迷うかもしれませんが、摩擦力がなければ棒がどうすべるかをイメージして向きを考えましょう。

また静止摩擦力は未知の力として R とおくのが鉄則でした。

後でも出てきますが、静止摩擦係数を使った μN はあくまですべり出す直前の最大静止摩擦力です。

不安な方は次の記事でご確認いただければと思います。

さて、力がすべて図示できたら剛体である棒の静止条件を考えます。

剛体の静止条件は「力のつり合い」と「モーメントのつり合い」の2つでした。

前者はおなじみで問題ないかと思います。

T は水平(x)成分と垂直(y)成分に分ければ良いでしょう。

問題は後者です。

前述のとおりモーメントの支点は未知の力が多く集まる点にするのがポイントでした。

本問では重力以外は未知の力です。

そこで R と N の2つが集まる、棒と壁の接点をモーメントの支点にすればよいでしょう。

すでに T の分解が完了しているので、案外すんなり立式できるはずです。

このように「力のつり合いの式」であらかじめ力を分解しておくことが多いことも考えると、やはりモーメントの求め方としては力の移動よりも力の分解に慣れておくべきだと言えます。

こうして未知数3つ(T、R、N)に対し、①から③の3つの式ができたので、連立することでそれぞれを求めることができます。

(1)は③式を T について解くだけです。

(2)では R を求めた後、それが μN 以下である条件を計算します。

繰り返しますが、μN はすべり出す直前の最大静止摩擦力なので、はじめの立式の段階から μN を使うのは誤りです。

いかがだったでしょうか。

冒頭でも述べたとおりモーメントは苦手意識を感じる方が多い分野ですが、この記事が少しでも苦手意識の払拭のお役に立てば幸いです。

今回は以上です。

最後まで読んでいただきありがとうございました!