【大学入試】ポアソンの法則の要点総ざらい(比熱比、断熱曲線、仕事など)

難易度:★★★★
頻出度:★☆☆☆

今回は物理の熱力学分野からポアソンの法則について解説します。

ポアソンの法則は高校物理の範囲から少し外れますが、断熱変化の理解を深めるためには必要不可欠な法則です。

大学受験対策としてどういったところを押さえておけばよいか、ポイントを絞って解説したいと思います。

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ポアソンの法則とは

ポアソンの法則は理想気体の断熱変化についての法則で、次のポアソンの式を与えます。

2通りのポアソンの式

2通りのポアソンの式

このようにポアソンの式は2通りの書き方がありますが、覚えておくべきは上の圧力 P と体積 V の関係式です。

気体の状態方程式を使えば下の絶対温度 T と V の関係式にも簡単に変形できます。

どちらの式でも右辺が一定ということなので、2つ(もしくはそれ以上)の状態をつなげて使うのが基本です。

比熱比 γ

ここでポアソンの式における γ比熱比と呼ばれ、定圧モル比熱 Cp と定積モル比熱 Cv の比です。

ポアソンの式における比熱比 γ

またマイヤーの関係式(Cp と Cv との間の関係式)を使うと、γ の定義式は上図のように変形できるので、γ は1より大きいことが分かります。

さらに単原子分子の場合は Cv = 3R/2 なので、γ は 5/3 という簡単な値になります。

以上の γ の定義と式変形の過程は押さえておきましょう。

なお、マイヤーの関係式については次の記事をご参照ください。

簡単な導出の仕方も説明しています。

断熱曲線の形

次にポアソンの式を視覚的に理解しておきましょう。

熱力学でグラフと言えば P-Vグラフ!ということで、ポアソンの式が P-Vグラフ でどう描かれるかを説明していきます。

(この次のセクションでも出てきますが、P-Vグラフ が重要なのは、P-Vグラフ の面積(積分値)が気体がする仕事になるからです。)

P-Vグラフ 上で気体の断熱変化を表す曲線を断熱曲線と言います。

気体の等温変化を表す等温曲線との比較が大事です。

次の図をご覧ください。

断熱曲線と等温曲線の形

等温変化、つまり T が一定の変化では PV = 一定ボイルの法則)となるので、等温曲線は反比例の曲線となります。

一方、断熱変化ではポアソンの式が成り立ち、V の肩に乗った γ が1より大きいので、断熱曲線の傾きは等温曲線よりも急になります。

断熱曲線が等温曲線の下に潜り込むようなイメージです。

以上の2つの曲線の形と位置関係は知っておくと良いでしょう。

断熱変化で気体がする仕事

さて、熱力学における主役は何といっても熱力学の第一法則です。

断熱変化でももちろん第一法則が成り立ちますので、どのように適用できるか、見ていきましょう。

なお、第一法則の概要とその標準的な使い方については次の2つの記事で詳しく解説しています。

下図をご覧ください。

第一法則は気体から見たエネルギー保存則として Qin = ΔU + Wout と書くのが一番です。

断熱変化の場合、文字通り断熱(熱の出入りなし)なので、まず Qin = 0 となります。

また気体の内部エネルギー変化 ΔU は、どんな変化でも必ず、定積モル比熱 Cv を用いて nCvΔT と書けます。

最後に残った気体が外部にする仕事 Wout は、第一法則が成り立つように Wout = –ΔU = -nCvΔT と決まります。

温度変化 ΔT は先ほどの T を含む方のポアソンの式から求めることができるので、これで ΔU と Wout が計算できます。

断熱変化に第一法則を適用する(気体がする仕事の図的解釈)

そして Wout の図的な意味についても確認しておきましょう。

Wout は P-Vグラフ の面積(積分値)ですから、1つ前のセクションで確認した P-Vグラフ 上の断熱曲線がつくる面積を求めれば、それが -nCvΔT となります。

と言っても、実際に積分して Wout を求めさせるような問題は大学入試では基本的に出題されませんし、何より Wout は -nCvΔT で計算する方が簡単です。

なのでここでは断熱曲線がつくる面積と -nCvΔT の正負が一致することを確認しておきたいと思います。

上図のグラフで示した断熱変化を考えます。

ポアソンの式で表される断熱曲線に従い、状態1から状態2まで気体を断熱変化させたものです。

状態1から状態2への変化の向きでは、この曲線がつくる面積(積分値)はです。

(逆向きの変化、つまり状態2から状態1への変化では面積(積分値)は負になります。)

次に -nCvΔT の正負を見極めましょう。

この変化では P が減少(P1 > P2)し、V が増加(V1 < V2)していますが、T はどう変化するでしょうか。

T を含む方のポアソンの式を見ると、γ は1より大きいので、V が増加すると T が減少することが分かります。

よって状態1から状態2への断熱変化で、温度は下がりますT1 > T2)。

したがって ΔT = T2 – T1 < 0 となり、-nCvΔT は全体でになります。

(Δ(変化)は、必ず「後-前」で計算します。)

ということで、断熱曲線がつくる面積と -nCvΔT の正負がきちんと一致しました。

<メモ>
-nCvΔT は先頭にマイナスがついているので負の値になると誤解しがちです。
実際はこのように ΔT の正負に依存するので十分に注意しましょう!

【補足・注意】断熱自由膨張には使用不可

ポアソンの法則・式について押さえておくべきポイントは以上ですが、最後に1つ注意点があります。

特殊な断熱変化として断熱自由膨張という変化がありますが、断熱自由膨張では気体が仕事をしないため、ポアソンの法則・式は成り立ちません。

断熱自由膨張について少し詳しく説明します。

断熱自由膨張とは断熱条件下で気体を真空中に拡散させることを言います。

例えば2つの容器をコックでつなげて片方に気体を封入、他方を真空状態にし、断熱条件下でコックを開けると気体は真空容器側に拡散していきます。

このとき気体は真空容器側に自由に流れ込むだけですから、容器外部に対して仕事をしない(外部に力を及ぼさない)ので Wout = 0 となります。

そして断熱条件なので Qin = 0 となり、第一法則より ΔU も 0 となります。

ΔU はどんなときも nCvΔT と書けるので、結果として ΔT = 0、つまり断熱自由膨張では温度変化なし(温度一定)と結論付けられます。

まとめ

ここまでお疲れ様でした。

当ブログではいつも、記事のおわりに単語カードによるまとめを行っています。

今回も下図のように、ポアソンの法則・式のポイントをおさらいできるまとめを作っておきました。

ポアソンの式は2通りありますが、片方を覚えておけば十分です。

状態方程式を使えば T を含む形にもすぐ変形できますので。

この式における比熱比 γ については、定義式(γ = Cp/Cv)と 1 より大きいことを覚えておきましょう。

そして断熱曲線等温曲線の形・位置関係、そして第一法則を使えば Wout = -nCvΔT となることも知っておくと便利です。

ポアソンの法則・式のポイントまとめ(1)

ポアソンの法則・式のポイントまとめ(2)

いかがだったでしょうか。

高校物理の範囲を超えるため、ポアソンの式や γ の定義は問題文で与えられることも多いです。

しかしあらかじめ知っているのといないのとでは、対応力に雲泥の差がでることでしょう。

この記事の内容が少しでも参考になれば幸いです。

最後までお付き合いいただきありがとうございました!