実在気体とは。「ずれ」を表すグラフがしっかり分かる解説。

難易度:★★☆☆
頻出度:★★☆☆

今回は実在気体について、かなりじっくり解説したいと思います。

高校化学は計算がメインなところがあるので、実在気体に関する知識が入試で聞かれることはそれほど多くはないかもしれません。

しかし、だからこそ出題されると差がつく可能性があり、あなどれません。

図やイメージを示しながら分かりやすく解説しますので、この記事を読んでいただければ実在気体についてはバッチリなはずです。

なお、理想気体および状態方程式の知識が前提となりますので、不安な方は前回の記事を参考にしていただければと思います。

いつもより文章量が多めかもしれませんが、是非最後まで読んでみてください。

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実在気体とは(理想気体との違い)

仮想的な気体である理想気体に対して、実際の気体を実在気体と呼びます。

現実に存在する気体はすべて実在気体です。

前回の記事で理想気体にはミクロとマクロの2つの定義があると説明しました。

ミクロの観点では、理想気体は①分子間力と②分子自身の体積がない(無視できる)気体でしたが、実在気体では分子間力が働きますし、分子は自身の体積を持ちます

またマクロの観点では、理想気体は気体の状態方程式に厳密に従いますが、実在気体は完全には従いません

さて、どんなときもミクロとマクロはつながっているもの。

同じものをスケールの異なる視点で見ているだけなので、ミクロの現象はマクロの現象に影響します。

今回の例で言えば、実在気体と理想気体のミクロの差は、両者のマクロの差に影響を与えます。

そこでここからは、理想気体と比べたときの実在気体のミクロな特徴、つまり「①分子間力と②分子自身の体積があること」が、実在気体のマクロな特徴(最終的には状態方程式からのずれ)にどのような影響を与えるか、解説していきます。

ここは教える人や教科書・参考書によって説明の仕方に少し差が出るところですが、①分子間力と②分子自身の体積の2つの効果が実在気体の「体積」に与える影響に帰着させて考えるのが最も分かりやすいと思います(理由は後で補足します)。

①分子間力の効果

次のイメージ図をご覧ください。

理想気体 vs 実在気体 ①分子間力の効果

気体の分子間に働く力は引力です。

よって分子間力が働くということは、分子同士が近づき気体全体として凝縮することを意味します。

したがって分子間力は実在気体の体積を理想気体の体積よりも小さくします

<メモ>
気体の分子量が大きいほど分子間力は大きくなります。

【補足】

分子間力の体積への影響を考える際は、圧力一定という条件付きです。

逆に体積一定で分子間力の影響を考えると、実在気体の圧力は理想気体の圧力よりも小さくなります。

(気体の)圧力は外へ向けた力のことなので、内に向けて引力が働けばその分小さくなるのは当然ですよね。

このように実在気体の分子間力の影響の向かう先を圧力と捉えても良いのですが、体積への効果を考える方が②との横並びも考慮すると理解がしやすいと思います。

②分子自身の体積の効果

こちらもイメージ図を見ていただくと分かりやすいでしょう。

理想気体 vs 実在気体 ②分子自身の体積の効果

本当は気体は三次元的に存在しますが、簡単にイメージするために二次元上に等間隔で(正方形の頂点に)4つの分子を配置してみます。

理想気体の分子には自身の大きさがないわけですから、理想気体の分子は言わば点です。

なので気体全体で見ると正方形の大きさ分の面積(三次元なら体積)しか占めません(上図左の黄色の枠内)。

一方、実在気体の分子には大きさがあるので、気体全体で見ると正方形よりも大きい面積(三次元なら体積)を占めることになります(上図右の薄緑色の枠内)。

というふうに、分子自身の体積を考慮すれば、気体の体積は大きくなります。

よって分子自身の体積は実在気体の体積を理想気体の体積よりも大きくします

【発展】

先ほど気体の分子間には引力が働くと言いました。

一方、分子自身に大きさ(体積)があると分子同士は接触(衝突)しやすくなりますよね。

その意味で分子自身の大きさ(体積)は分子間斥力とも捉えることができます

この観点も持っておくと、どこかで役に立つことがあるかもしれません。

実在気体の「ずれ」を表すグラフの見方

ここまでの内容を踏まえて、いよいよ、実在気体の理想気体からのずれ、つまり「状態方程式からのずれ」がどうなるかを見ていきましょう。

このずれを見るために用いられるグラフがあります。

縦軸が PV/nRT、横軸が P のグラフです。

このグラフには特に名前はついていませんが、定期テストや大学入試で頻出なので、見方を必ず押さえておきましょう。

次の図を見てください。

実在気体の理想気体からのずれを PV/nRT のグラフで見る

まず理想気体は状態方程式「PV=nRT」に厳密に従うので、横軸 P がどんな値でも縦軸 PV/nRT の値は常に 1 となります(横軸に平行な直線)。

一方、実在気体は理想気体の直線からずれます。

どのようにずれるか、上で述べた①分子間力と②分子自身の体積の効果を思い出してください。

①分子間力は実在気体の体積 V を小さくするので、縦軸 PV/nRT の値を小さくします。

よって①分子間力は実在気体の曲線理想気体の直線より下にします

(言い換えれば実在気体の曲線が理想気体の直線より下にある部分は①の効果によるものです。)

また②分子自身の体積は実在気体の体積 V を大きくするので、縦軸 PV/nRT の値を大きくします。

よって②分子自身の体積は実在気体の曲線理想気体の直線より上にします

(言い換えれば実在気体の曲線が理想気体の直線より上にある部分は②の効果によるものです。)

加えて、なぜ低圧(グラフの左側)で①分子間力の効果が現れ、高圧(グラフの右側)で②分子自身の体積の効果が現れるのか、説明します。

ちょっとイメージしてみてください。

低圧ということは、気体が占有している空間に気体の分子はあまりつまっていません(分子が少数しかありません)。

すると分子1つ1つの大きさ、つまり②分子自身の体積は無視できるので①分子間力の効果が顕著に現れます。

逆に高圧では分子同士の距離が非常に近く、分子同士が頻繁にぶつかるので②分子自身の体積の効果が色濃く表れます。

(上の【発展】で述べたように、②分子自身の体積は分子間斥力とも捉えられるのでした。)

以上のことから実在気体の曲線は、はじめに理想気体の直線の下側に入り、圧力が高くなるにしたがって理想気体の直線の上側に躍り出るようになります

<メモ>
問題によっては、縦軸が「PV/RT」や「PV/T」の場合があります。
縦軸の値は変われど、グラフの傾向(形)は変わりません。

実在気体が理想気体に近づく条件2つ

このグラフに関してもう一点、是非覚えておいていただきたいことがあります。

それは実在気体が理想気体に近づく条件です。

2つあります。

今度は次の図を見ながら後の文章を読んでいただければと思います。

実在気体が理想気体に近づく条件2つの説明図

低圧

1つ目の条件は「低圧」です。

低圧にすればするほど分子同士の距離が離れ、②分子自身の体積の効果、さらには①分子間力の効果も無視できるようになります。

(分子間力は分子同士の距離が近いほど強く働きます。)

なので上図に示したように、P=0 付近では実在気体は理想気体にかなり近づきます。

高温

2つ目の条件は「高温」です。

高温にすればするほど分子1つ1つの熱運動が激しくなり、もはや①分子間力や②分子自身の体積はあまり意味を成さなくなります。

よって上図のとおり実在気体の曲線は理想気体の直線に近づきます。

<注意>
低圧を考える際は(横軸が圧力 P なので)1つの曲線で左側を見ますが、高温を考える場合は別の曲線を見ることになります。

問題に挑戦!

ここまでかなり長かったと思います。

お疲れさまでした!

まとめの前にここまでの内容をおさらいするクイズに是非挑戦してみてください。

問題

実在気体に関する次の各問いに答えよ。
1.実在気体とは何か、簡潔に答えよ。
2.理想気体からのずれが小さいのは水素と二酸化炭素のどちらか。
3.実在気体を理想気体に近づけるには、温度はどうすればよいか。

<解答>

1. 分子間力、分子自身の体積を考慮する現実の気体。

実際の試験では文字数制限に合わせて「理想気体と異なり」や「状態方程式に完全には従わない」などの文言を追加しても良いでしょう。

2. 水素

序盤の「メモ」で書いたとおり、分子量が大きいほど分子間力が大きくなりますので、結果として理想気体からのずれも大きくなります。

よって分子量の小さい水素の方が理想気体からのずれが小さいです。

3. 高温にする

実在気体が理想気体に近づく条件は「低圧」と「高温」でした。

まとめ

最後に当ブログ恒例の単語カードのまとめです。

実在気体は理想気体と違って何を考慮するのか、そしてそれにより状態方程式からどのようにずれるのか、次のように押さえておくと良いと思います。

グラフの形(実在と理想の位置関係)も視覚的に覚えておいていただきたいので、小さいですがイメージ絵も描いて添えてみました。

実在気体のポイントまとめ(1)

実在気体のポイントまとめ(2)

今回は以上です。

最後まで読んでいただきありがとうございました!