固体の溶解度の計算問題を解くための3ステップを水和物の析出問題で解説

難易度:★★☆☆
頻出度:★★☆☆

今回は固体の溶解度について、水和物の析出量を求める問題を解説します。

溶解度の計算問題の中でも水和物の問題は苦手に感じる方が多い印象です。

でも今回説明する3ステップとたった1つのポイントを意識すれば、けっこう簡単に解けますよ!

まとめと例題を用いながら徹底解説しますので、是非最後まで読んでみてください。

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固体の溶解度の基本事項

はじめに、固体の溶解度に関する基本的な内容をお話ししたいと思います。

なお、溶質や溶媒といった溶液分野の化学用語について、不安な方は次の記事も参考にしてください。

今回の記事とはあまり関係ありませんが、濃度の単位変換の例題解説なども行っている記事です。

溶解度と飽和溶液

溶質が一定量の溶媒に溶ける量には限界があり、その限界値を溶解度、限界まで溶質を溶かしてできた溶液を飽和溶液と言います。

溶解度は普通、溶媒 100 g に溶ける溶質の質量 (g) 、または飽和溶液の質量に対する溶質の質量の比で表します。

本記事で扱う固体の溶解度とは(最もよく用いられる溶媒である)水に対する固体の溶解度のことで、問題文などでは水 100 g に溶ける固体の質量 (g) で表されることがほとんどです。

<メモ>
飽和溶液では溶質の溶解が止まっているわけではありません。
溶解と析出が同じ速度で起こることで、見かけ上溶解していないように見えるだけです。
この状態を溶解平衡と言います。

温度との関係とその理由

溶解度は温度によって変化します。

固体の溶解度について言えば、一般に温度が高くなるほど溶解度は大きくなることが多いです。

(あくまで「多い」であり、「必ず」ではありません。)

これは固体の溶解の多くが吸熱反応であるためです。

<メモ>
温度が高くなるほど溶解度が小さくなる代表的な固体として水酸化カルシウムがあります。
また水酸化カルシウムの元とも言える酸化カルシウムは、水と接触すると激しく発熱して水酸化カルシウムになるので、その場で温められるお弁当などに使われています。

どういう問題が出るか

固体の溶解度に関しては、出題される問題のパターンは大体決まっています。

前述の通り、固体の溶解度は温度が高くなるほど大きくなるのが普通です。

このことを利用し、高温で溶質が多く溶けている溶液(もしくは飽和溶液)を冷却して低温にし、溶けきれなくなった固体を析出させる設定が定番です。

水和物の問題のミソ

特に難しいのは冒頭でもお話しした水和物の問題です。

水和物とは、簡単に言えば、析出するときに水が一緒にくっついた状態で固体(結晶)になる化合物のことです。

水和物で析出する溶質の代表例は硫酸銅(II)であり、五水和物(つまり水が5個くっついた状態)として析出します。

水和物について注意すべきは、水溶液中では溶質を無水和物と考えるということです。

つまり水溶液中では通常の固体の場合と同様に、溶質は溶質溶媒である水は水で独立して存在していると考えます

この考え方については後の例題演習で示す図でもご確認ください。

析出するときにはじめて、水がくっついてくるイメージです。

※実際は溶質は溶媒に囲まれて安定化しています(溶媒和と言います)。

溶解度の問題を解くための3ステップ

さて、固体の溶解度の問題は案外ややこしくて混乱しがちです。

しかし、理解しながら着実に、かつ結構あっさり解ける方法があるので、ここで紹介します。

次の単語カードに解法の3ステップをまとめました。

※この解き方・ポイントは、析出する固体が水和物であってもなくても使えます。

固体の溶解度の計算問題を解くための3ステップとポイントのまとめ(1)

固体の溶解度の計算問題を解くための3ステップとポイントのまとめ(2)

図は硫酸銅(II)水溶液の例をかきましたが、少し小さくて見づらいかもしれません(ごめんなさい)。

しかし、これだけでは抽象的でしっくりこないと思いますので、実際の問題で具体的な解き方を解説したいと思います。

問題に挑戦!

ということで、次の例題を考えてみましょう。

スタンダードな硫酸銅(II)・五水和物の析出問題ですが、固体の溶解度は難しい問題があまり作れない分野でもあるので、これくらいのレベルをしっかり解けるようにしておけば入試対策はとりあえずOKだと思います。

問題

60℃ の硫酸銅(II)飽和水溶液 70 g を 20℃ に冷却したとき、硫酸銅(II)五水和物の結晶は何 g 析出するか。
整数で答えよ。
ただし、水 100 g に対する無水硫酸銅(II)の溶解度は、20℃ で 20 g、60℃ で 40 g とする。

<解答>

早速解答を示し、すぐ下で文章で補足します。

なお「飽和」は英語で「saturated」ですので、簡単のために飽和水溶液を aq(sat) と表記しています。

あくまで私の自己流なので、テストなどの解答で使うときは一言断っておくのが無難かもしれません。

硫酸銅(II)五水和物の結晶の析出量を求める問題の解答

まずは Step.1 として、問題文で与えられた溶解度の情報を表にします。

表にすることでケアレスミスを減らせますので、必ずはじめにざっとでいいので表にすることをオススメします。

次に Step.2 として、冷却前後(析出前後)の図をかきます。

ここで、本当は溶質は溶液内で均一に溶け込んでいますが、溶質紫色の部分)と溶媒水色の部分)を区別してかくと分かりやすいです。

また、温度・質量・濃度(今回はなし)など、あらかじめ分かっている量は図に書きこんでおきましょう。

最後に Step.3 として、求めたいものを x とおいて、表の溶解度を用いて比(分数)の式をつくります。

本問では硫酸銅(II)五水和物の析出量が聞かれていますので、それを x (g) とおきます。

そして表から得られる飽和水溶液の質量に対する溶質の質量の比(CuSO4/CuSO4 aq(sat))を冷却前後と繋ぎます。

冷却前は飽和水溶液なので、CuSO4/CuSO4 aq(sat) を計算すればそれは表から得られる比と一致します。

また冷却後は、単語カードにポイントとして書いたとおり、析出した結晶を除けば残りは飽和水溶液になっていることを利用し、これ結晶を除いて計算した CuSO4/CuSO4 aq(sat) が表の比と一致する、という式を立てます。

ここで冷却前の CuSO4 の質量も未知なので、y とおいてささっと求め、その値を用いて冷却後の CuSO4 の質量を x で表します。

上でも強調したように、水和物であっても、溶液中で溶質は溶質無水和物)、溶媒は溶媒で独立している、と考えるのがミソです。

CuSO4 と CuSO4・5H2O の式量の比を用いて、析出した CuSO4 のみの質量を x で表し、それを y から引けば冷却後の CuSO4 の質量になります。

冷却後の溶液の質量は、冷却前の溶液の質量から析出した結晶の質量 x をそのまま引けばよいので 100ーx (g) となります。

このようにして上図中の最後の式が立式できます。

最後にもう一点だけ注意点をお伝えします。

表と冷却前後を繋ぐ比の式を立てるときは、温度を間違えないようにしましょう。

冷却前が 60℃、冷却後が 20 ℃ですが、冷却後にも 60 ℃ の比を使ってしまうというケアレスミスをけっこうしがちです。

ラストまで慎重に解き進めましょう!

という風に、カードにまとめた3ステップを踏み、「結晶を除けば残りは飽和溶液」というポイントを押さえておけば、大抵の問題はきっと解けると思います。

途中、少し回りくどい説明があったかもしれませんが、この解法が少しでも皆さんの参考になれば幸いです。

といったところで今回は以上となります。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!