静止摩擦力の求め方に公式はない~静止摩擦係数という嘘つき~

難易度:★★☆☆
頻出度:★★★★

今回は求め方を誤解されがちな静止摩擦力について解説します。

静止摩擦係数で求めるんでしょと思われた方は残念ながら間違いです。

正しい求め方をしっかり解説&まとめて、最後に演習しますので、是非最後までお付き合いください。

それでは張り切っていきましょう!

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そもそも静止摩擦力とは?

静止摩擦力はその名の通り「静止している物体に働く摩擦力」です。

一般に摩擦と言うと、2つの物体がこすれ合うことを指しますので、静止している物体に働くというのは少し感覚とずれていますよね。

静止摩擦力は言わばストッパーのような役割をします。

例えば、ざらざらした斜面に置かれた物体が滑り落ちないで静止しているのは静止摩擦力が働いているからです。

動き出してからの摩擦力は動摩擦力と呼ばれます。

<メモ>
静止摩擦力と動摩擦力、まとめて摩擦力は抗力の一種です。
抗力のうち、物体同士の接触面に垂直な成分を垂直抗力、平行な成分を摩擦力と言います。

静止摩擦力の求め方

静止摩擦力の求め方に公式はありません

静止摩擦力は運動方程式(静止しているのでつり合いの式の結果として(解として)求まります

静止摩擦係数 μ と垂直抗力 N を使って「μN」と求める、と誤解されがちですが、この式では静止摩擦力を求めることはできません。 

静止摩擦力は変化する

前述の通り、静止摩擦力はストッパーの役割をします。

なので、物体を動かそうと加える力が大きければ大きいほど、動かすまいとする静止摩擦力も大きくなります。

このように静止摩擦力は物体に働くその他の力の向きや大小によって、運動方程式(つり合いの式)を満たすように変化します。

最大値が最大静止摩擦力

そして物体を動かそうと加える力をどんどん大きくしていくと、やがてストッパーは外れ(静止摩擦力の限界がきて)物体は動き出します。

物体が動き出す直前の静止摩擦力を最大静止摩擦力と言い、これを求める公式が「μN」です。

μ は静止摩擦係数N は物体に働く垂直抗力です。

静止摩擦係数は嘘つき

静止摩擦力係数という名前に騙されてはいけません。

静止摩擦係数は静止摩擦力を求める係数ではなく、最大静止摩擦力を求める係数です

静止摩擦係数を使っても最大値しか求められないということですね。

前述の通り、最大値以外の静止摩擦力は運動方程式(つり合いの式)から求める他ありません

ちなみに静止摩擦係数は接触する2つの物体の表面の性質(互いにどれくらいざらざらで滑りにくいか)によって決まる定数です。

静止摩擦力のまとめ

説明が続きましたので、ここでズバリまとめておきます。

いつも通り単語カードにエッセンスを詰め込みました。

静止摩擦力の求め方のまとめ(つり合いの式、静止摩擦係数、最大静止摩擦力など)(1)

静止摩擦力の求め方のまとめ(つり合いの式、静止摩擦係数、最大静止摩擦力など)(2)

少し補足です。

静止摩擦力は「Rと置く」と書きましたが、文字は何でも構いません。

問題に合わせ、自分で分かりやすいように設定しましょう。

R は resistance(抵抗力)の頭文字です。

また静止摩擦力の働く向きについてですが、普通はあまり意識しないでも感覚で分かると思います。

しかし問題の設定が複雑になってくると、向きがすぐに分からないこともあります。

そういうときは、静止摩擦力はストッパーの役割、ということを意識すると良いでしょう。

または、もし物体が動き出したら運動を妨げる、つまりブレーキの向きと覚えておけば安心です。

(基本的には、静止しているときの静止摩擦力と、動いてからの動摩擦力の向きは一致するので、このように「もし動いたら」と考えるのは有効です。)

<注意点>

摩擦力にも作用・反作用の法則が当てはまります

注目している物体にとってはブレーキの向きでも、その反作用の力が、接触している他の物体にとってはアクセルの向きになる場合もあります。

よって複数の物体の運動を考える問題では、作用・反作用の法則に注意して摩擦力の向きを慎重に吟味するのが良いでしょう。

静止摩擦力の問題に挑戦!

それでは静止摩擦力を求める問題を解いてみましょう。

それほど難しくはない問題ですが、是非実際に図を描いて考えてみてください。

問題

水平面と θ の角度をなす斜面上に質量 m の物体を置いたところ、物体は静止した。
斜面と平行下向きにひもで引っ張ることにより、この物体を動かしたい。
斜面と物体との間の静止摩擦係数を μ、重力加速度を g として、次の問いに答えよ。

(1)張力 T で引っ張っても物体は静止したままだった。このときの静止摩擦力を求めよ。
(2)張力 T をいくらより大きくすればこの物体を動かすことができるか。

<解答>

物理では図が命!」ということでまずは図を描きます。

そして正方向を決めてから物体に働く力をすべて図示します。

力の図示が苦手な方は是非次のリンク先の記事もご参照ください。

次の記事でも解説しているように、物体同士を少し離して描くと力の図示がしやすくてオススメです。

今回は斜面下向きに物体を動かそうとしているので、それを止める向き、つまり斜面上向きに静止摩擦力が働きます。

静止摩擦力の大きさは、まず R と置きます。

最初から μN にするのは間違い、というのはもう大丈夫ですよね。

また、重力の分解には注意しましょう。

本問では水平面と斜面のなす角が与えられていますが、別の箇所の角度が与えられる場合もあります。

いつも必ず、斜面と平行な成分が mgsinθ、垂直な成分が mgcosθ になるわけではありませんので。

後は運動方程式(つり合いの式)を2方向について書いて解けば、(1)は終わりです。

(2)では静止摩擦力が最大値、つまり最大静止摩擦力をとるときの張力が聞かれています。

ここではじめて静止摩擦係数を使います。

静止摩擦力を求める例題(最大静止摩擦力も)の解答

いかがだったでしょうか。

静止摩擦力や最大静止摩擦力の求め方の基本はお伝え出来たかと思います。

今回は以上となります。

次回は今回の続きとして動摩擦力の解説を行います。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

また次回、どうぞよろしくお願いします!