熱効率は公式だけじゃダメ。最強の求め方(表解法)を伝授!

難易度:★★☆☆
頻出度:★★☆☆

今回は熱機関の熱効率を徹底解説します。

熱効率の求め方について、教科書等では公式が登場しますが、正直なところ公式を覚えるだけでは不十分です。

とっておきの、表を使った解法を紹介しますので、是非身に付けていただきたいと思います。

もちろんいつも通り、熱機関とは何か、熱効率とは何か、といった基本的なところからはじめて、実際の例題演習までもっていきますよ!

少し長い記事ですが、どうぞ最後までお付き合いください。

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熱機関とは

熱効率は熱機関について定義されますので、まずは熱機関について簡単に説明します。

次の図をご覧ください。

熱機関の説明図

熱機関はズバリ、「熱を仕事に変換する気体装置」です。

気体が高温熱源から熱量 Q を吸収し、その一部を外部への力学的仕事 W に変え、残った熱量 Q’ を低温熱源へ捨てることで元の状態に戻ります。

この一連の状態変化を熱サイクルと呼びます。

<メモ>
問題に出るような実際の熱サイクルは、気体のいくつかの状態変化の組み合わせから成ります(後の例題をご覧ください)。
ここで示した「熱吸収→仕事に変換→熱放出」はあくまで熱機関の仕組みを概念的に表したものです。

エネルギー保存

図中にも示しましたが、吸収した熱量 Q、変換した仕事 W、放出した熱量 Q’ の間には次の関係式が成立します。

熱サイクルのエネルギー保存

Q-W = Q’

サイクルを一周すると気体は元の状態に戻るので、温度も元の状態に戻ります。

温度が変わらないということは、内部エネルギー変化 ΔU が 0 ということです。

よって上記のエネルギー保存式が成り立ちます。

気体はエネルギーをためずに、もらったエネルギーの一部を仕事に変え、残りはすべて放出する、というイメージです。

なお、内部エネルギー(変化)については次の記事で詳しく解説していますので、併せてご確認いただければと思います。

熱効率とは

ではいよいよ熱効率の説明に入ります。

吸収した熱量のうちのどれだけを仕事に変換できるか、熱機関のエネルギー変換能力を表す指標が熱効率です。

次の図中の式で定義され、求めることができます。

熱効率の説明図

気体が外部にした仕事 W吸収した熱量 Q で割ります。

先ほどのエネルギー保存の式を使えば仕事を含まない形にも変形できますね。

ここで注意点が2つあります。

1点目、分母は気体が実際に吸収した熱量のみとなり、放出した熱量は含まれません

熱サイクルを構成する各状態変化について、気体は熱を得たのか、それとも失ったのかをしっかりと吟味する必要があります。

この点については後ほど、表解法の紹介と例題解説でも詳しく説明しますのでご安心ください。

2点目、気体が仕事をされた場合は、分子からその分を差し引く必要があります

難しいことのように聞こえるかもしれませんが、後ほど紹介する解法を使えば、深く考える必要はありませんよ!

熱力学の第二法則

さて、表解法の説明の前に重要な法則をお伝えします。

図中にも示しましたが、熱効率は必ず1未満となります。

つまり吸収した熱量のすべてを仕事に変換することはできません。

これを熱力学の第二法則と言います。

第一法則と併せて、その意味を必ず覚えておきましょう。

熱効率を求める表解法

それではいよいよ、熱効率を求めるオススメの解法を伝授いたします。

なお、次の関連記事の内容が前提となっていますので、不安な方は今一度ご確認ください。

(2つ目は上でもリンクを貼った記事です。)

次の図で説明します。

熱効率を求める表解法の説明図(3ステップ)

このステップを踏めば大抵の問題はあっさり解けます!

各ステップについてコメントしますね。

<Step.1>

まず熱力学の第一法則(Qin = ΔU + Wout)の表の枠組みをつくります。

列が法則を構成する物理量 Qin(気体が吸収する熱量)、ΔU(内部エネルギー変化)、Wout(気体が外部へする仕事) で、行が熱サイクルの各状態変化の過程です。

最下段に1サイクルの合計の欄をつくるのを忘れないようにしましょう。

<Step.2>

次に表の空欄を埋めていきます。

基本的にはまず、ゼロのところいつも nCvΔT で求められる ΔUp-Vグラフの面積(積分値)で求められる Wout の欄を埋めていきます。

そしてすぐには分からない(直接求められない)ところを、熱力学の第一法則で計算します。

計算すると言っても、各行で他の2つの物理量が分かっていれば、残りの1つの物理量はすぐに分かります。

(普通は Qin はすぐには分からないことが多いです。とは言え、いろいろな問題のパターンがあるので、その都度対応するように心掛けましょう。)

(また、表中の正負(> 0 や < 0 )の位置はあくまで例です。)

そして各列で1サイクルの合計を計算します。

ここで前述の通り、1サイクル回れば気体は元の状態(元の温度)に戻るので、ΔU の合計値は必ず0になるので確認しましょう。

<Step.3>

最後に Step.2 で完成した表の各値を用いて、熱効率の公式を立式すればフィニッシュです。

ここで先ほどの注意点が再登場します。

前述の1つ目の注意点より、分母には気体が実際に吸収した熱量、つまり(Qin を考えているので)表中の正の熱量のみの和を代入します。

例えば上図の例では、〇→A の状態変化は負の熱量(熱を放出)なので分母には加えません。

この点はこの後の例題演習でも再度強調します。

なお、前述の注意点の2つ目「された仕事は分子から差し引く」は Step.2 で1サイクルの合計を計算する時点で考慮できています。

なので公式の分子には、素直に表の Wout の合計値(最下段の値)を代入すれば問題ありません。

「う~ん、ピンと来ない!」という方もご安心ください!
次の例題で実際にこの表解法を使います。
とことん解説するので、是非じっくり読んでみてください!

問題に挑戦!

ということで実際にこの解法を使って、熱効率を求める問題に挑戦してみましょう。

スタンダードな問題ではありますが、表解法のエッセンスを理解するには十分です。

熱効率を求める例題

<解答>

表解法を使えばけっこう簡単に解けます。

次の図を見てください。

熱効率を求める例題の解答(表解法)

まずはじめに点Aでの温度を文字で置いて、A、B、C の各状態における状態方程式を立てておきましょう。

状態方程式を立てておけば後の式変形で使える、など何かと便利ですし、B および C における温度(後で ΔU の計算に ΔT を使うことになるので必要)も簡単に求めることができます。

あとは表解法の3ステップを踏むだけです。

ステップ1で熱力学の第一法則の表の枠組みをつくり、ステップ2で空欄を埋めていきます。

まずは ΔU の列を埋めるのが楽だと思います。

何度も強調していますが、ΔU はどんな状態変化においても nCvΔT で求められます

1サイクルの合計は必ず0になることを確認しましょう。

次は Wout の列を埋めましょう。

Wout は p-Vグラフの面積(積分値)なので、定積変化ではゼロ、定圧変化では長方形の面積(今回は負になるので注意!)となります。

B→C は問題文で与えられていますね。

ΣWout はただ合計するだけです。

<メモ>
上の解答中の左上に書いた通り、ΣWout は熱サイクルで囲まれた部分の面積になります。
このことを使うと素早く解ける問題もあるので、是非知っておきましょう!

最後に Qin の空欄を埋めていきます。

問題文で与えられたり、定圧モル比熱が与えられたりしているわけではないので、Qin は直接は求められず、第一法則の結果として得られます。

といっても、表で残り2つの物理量の欄がすでに埋まっているので、右2列の和をとるだけです。

1サイクルの合計値 ΣQin については今回は計算不要です。

(計算と言ってもただ式を足すだけですが。)

熱効率の計算に必要なのは正の熱量の和である ΣQin(+) ですので。

そしてラストのステップ3でいよいよ熱効率を求めます。

表がきちんと埋められていれば、後は公式に代入するだけです。

何度も注意して恐縮ですが、分母は正の熱量だけの和になることに気を付けましょう

分子は表の Wout の合計値をそのまま使ってOKです。

合計するときに、された仕事(本問では C→A 間)はちゃんとマイナスで足されていますからね。

最後に問題文で与えられた定積モル比熱と状態方程式を使って式変形して解答終了です!

<メモ>
「W は問題文で与えられているけど、負の場合もあるのでは?」 と思われた方もいるかもしれません。
問題文で与えられていても、気体がした仕事が p-Vグラフの面積であることに変わりはありません。
B→C がつくる面積は正なので、W も正になります。

いかがだったでしょうか。
表解法の威力を実感していただけたら幸いです。

まとめ

ここまで読んでいただきありがとうございます。

最後に今回のまとめです。

単語カードに表解法の概要をまとめましたので、参考にしてください。

熱効率を求める表解法のまとめ(1)

熱効率を求める表解法のまとめ(2)(3ステップ)

今回は以上です。

長い記事にもかかわらず、最後までお付き合いいただきありがとうございました。

今後とも当ブログをよろしくお願いします!