水銀柱の問題の攻略法:トリチェリの実験から mmHg ⇔ Pa の変換まで

難易度:★★☆☆
頻出度:★☆☆☆

今回はトリチェリの水銀柱の実験について詳しく解説したいと思います。

圧力の単位 mmHg が登場しますが、あまり馴染みのない単位なので難しく感じる方も多いはず。

実験の概要などの基本からはじめて、単位変換や水銀柱の計算問題の解説まで、攻略のポイントを伝授します!

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トリチェリの実験

はじめに次の図でトリチェリの実験について説明します。

実験の仕組み自体は簡単ですが、水銀(Hg)の使用や廃棄には細心の注意を払う必要があり、現代で行うことはほとんどないでしょう。

最初の実験者トリチェリ(E. Torricelli)にちなんで、実験名等がつけられています。

トリチェリの実験と水銀柱ミリメートルについての説明図

水銀を満たした容器内に一端が閉じたガラス管(長さ約 1 m)を入れ、管内に水銀を満たします。

この管をゆっくり鉛直に立てると、管内の水銀(水銀柱)はある程度下がったところで止まります。

これは大気圧と水銀柱の重さ(圧力)がつり合うからです。

図中のつり合いの位置に注意してください。

mmHg の設定と Pa への変換

ここからは流れが重要です。

上図のフローを見ながら読んでいただればと思います。

mmHg の登場!

標準気圧下の実験では水銀柱の高さは 760 mm となります。

そこで水銀柱ミリメートル mmHg という圧力の単位が設定されており、標準気圧は 760 mmHg となっています。

つまり、水銀柱の高さがそのまま圧力の単位となっているのです。

<メモ>
1 mmHg を 1 Torr(トル) とも呼びます。
Torr はトリチェリの名前から名付けられた単位で、mmHg と同義です。

mmHg から Pa への変換

ではこの 760 mmHg を、私たちがよく知っている圧力の単位パスカル [Pa] に変換してみましょう。

パスカル [Pa] は単位面積 [m2] あたりの力 [N] なので、水銀柱 760 mm の重力を計算します。

次の図のように底面積が単位面積 1 m2、高さが 760 mm の水銀柱を考え、単位に着目して立式しましょう。

特に、体積と質量の変換に密度を使うことは重要です。

水銀柱の重さを計算することで大気圧 [mmHg] を [Pa] に変換する計算方法

今回は簡単のため、水銀の密度や重力加速度に粗々な数値を用いましたが、これらの値の精度によって最終的な結果が変わってきます。

厳密には 101325 Pa となり、この値が標準気圧として定められています。

以上より、通常、大気圧は

大気圧

101325 Pa = 760 mmHg

となります。

これらの数値は必ず覚えておきましょう!

<メモ>
101325 Pa は 1 atm(アトム) または 1 気圧 とイコールです。
つまり、標準気圧は 1 atm または 1 気圧です。

トリチェリの真空

実験の説明の最後として、覚えておくべき用語を1つ紹介します。

管の上部は元々あった水銀が下に落ちていき、何もなくなります。

つまり真空になり、これをトリチェリの真空と呼びます。

図中一番下にも書いた通り、実際には水銀の蒸気も存在しますが、無視できるほど少量です。

トリチェリの水銀柱のまとめ

以上が実験の概要です。

ここで水銀柱関連の問題を解く上でのポイントを2つ強調したいと思います。

いつも通り単語カードにまとめておきます。

トリチェリの実験、水銀柱ミリメートル、Pa と mmHg の変換のまとめ(1)

トリチェリの実験、水銀柱ミリメートル、Pa と mmHg の変換のまとめ(2)

1つ目のポイントは「水銀柱の高さが圧力そのものである」ということです。

mmHg という単位は一見扱いにくそうですが、水銀柱の高さを測れば、それは水銀柱がつり合いの位置に及ぼす圧力そのものになります。

実用的な使い方に関しては、この後の例題演習で確認しましょう。

2つ目は「Pa ⇔ mmHg」の単位変換に関してのポイントです。

「Pa ⇔ mmHg」に限らず、単位変換は計算ミスの多発場所で、つまずきやすいところです。

しかし、単位変換は比で行えばまず間違えません

こちらも次の例題演習で実際にやってみせます。

水銀柱の問題に挑戦!

それではいよいよ水銀柱の例題に挑戦してみましょう。

理系科目では図を描くことが何よりも大事なので、是非実際に図を描いて考えてみてください。

もちろん、お忙しい方は解法だけさらっと確認してみてください。

問題

温度 25℃、大気圧 101 kPa でトリチェリの実験を行ったところ、ガラス管内の水銀柱は高さ 760 mm となった。
この状態でガラス管内にヘキサンを注入したところ、水銀柱の高さが下がった。
ただし、ガラス管内の水銀柱の表面にはヘキサンの液体がわずかに残っていた。
このときの水銀柱の高さ [mm] を求めよ。
25 ℃におけるヘキサンの(飽和)蒸気圧は 30 kPa とする。

<解答>

よく見る設定の問題です。

前半はトリチェリの実験そのものですが、後半は少し手を加えて水銀以外の気体をトリチェリの真空内に注入します。

本問ではヘキサンを注入し、これにより真空内がヘキサンの蒸気で満たされ、その蒸気の圧力によって水銀柱を押し下げます。

大気圧」と「水銀柱の重さ(圧力)ヘキサン蒸気の圧力の和」がつり合ったところで水銀柱の高さが決まります。

注意点は2つです。

つり合いの位置はヘキサン注入前と変わりません。

また液体のヘキサンが存在することから、気液平衡が成立し、ヘキサン蒸気の圧力は(飽和)蒸気圧を示します。

<注意>
「蒸気圧」と言うと厳密には「飽和蒸気圧」を指します。
ただ広義には、単に蒸気の示す圧力を指すこともあるので要注意です。
当ブログでは、「蒸気圧」と「蒸気の圧力」と2つの用語を使い分けています。

解答は次のとおりです。

上で強調した2つのポイント、「水銀柱の高さは圧力そのもの」、「単位変換は比で」に注目してください。

トリチェリの実験で水銀柱にヘキサンを注入する例題の解答

【補足】大気圧の実験(ストロー)

最後に、お風呂などで出来るちょっとした、本当にちょっとした実験を紹介します。

普段はあまり感じられない大気圧を目で見て実感できる実験です。

トリチェリの実験と同じ設定の実験を水(お湯)でやってみます。

大気圧で水が落ちないことを確かめる実験

水銀は常温で液体である唯一の金属であり、非常に重いため、 760 mm あれば大気圧とつり合いがとれます。

しかし、用いる液体が軽い水だと相当な高さ(10 m 以上)が必要になります。

ストローで上のように実験を行えば、ストロー内の水は落ちる気配ゼロで、大気圧が水を押さえていることが実感できます。

ストロー1本で簡単にできる実験なので是非やってみてください。

【さらに補足】

ちなみに同じ実験をストローよりも太い管で行うと、3) で水から完全に出した瞬間に空気が管下から入り込み、管内の水が落ちてしまいます。

これは管が太いほど管下の水の表面張力が小さくなり、空気が入り込みやすくなるためです。

例えばストローより少し太い管(例えば化粧品の小瓶など)で行うと、空気が管内にトクトク少しずつ入り、それと同時に水がゆっくり落ちてなくなるのが分かります。

そしてもっと太い管(例えばコップなど)で行うと、空気が管内にボコっと一瞬で入り、水は即座に落下します。

今回は少し欲張ってたくさん説明しました。
最後までお付き合いいただきありがとうございました!