ボルタ電池の仕組み:電池式と3つの問題点(起電力が落ちる理由など)

難易度:★★☆☆
頻出度:★☆☆☆

今回解説するのはボルタ電池です。

ボルタ電池は大学入試ではそれほど問題にされない、少々影の薄い存在ですが、入試頻出のダニエル電池の一世代前的な存在と理解しておくと、少し親近感が湧くかもしれません。

構造から問題点まで、どこよりも分かりやすく説明していきます!

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ボルタ電池とは

ボルタ電池はイタリアの物理学者ボルタが発明した世界初の一次電池です。

「初の」ということで電気化学の発展の歴史上重要な電池ではありますが、後述する問題点のため実用化はされていません。

ボルタ電池の構造・電池式

ボルタ電池の構造は非常にシンプルです。

次の電池式および模式図をご覧ください。

ボルタ電池の構造と電池式

電解液の希硫酸に亜鉛板と銅板を浸し、両者を銅線でつなぎます。

するとイオン化傾向の大きい(陽イオンになりやすい)亜鉛は電子を放出して亜鉛イオンとなり溶け出します

電池では電子を放出する還元剤が負極なので、亜鉛板は負極ということになります。

放出された電子は銅線を通り銅板へと流れつきます。

銅板は正極として機能しますが、電子の受け取り手は希硫酸中の水素イオンであり、水素イオンは還元されて水素が発生します。

ボルタ電池の反応式

以上の反応を反応式として書くと次のようになります。

ボルタ電池の反応式

負極と正極の反応式を合わせると、亜鉛が希硫酸に溶けるイオン反応式と同じ式になります。

この点については次のセクションでも触れます。

ボルタ電池の問題点

このように単純な構造&反応式のボルタ電池ですが、単純な故いくつもの問題点があります。

ここでは特に重要な3点について説明したいと思います。

腐食が大きい

1つ目の問題点は、放電を行っていないときでも負極極板の腐食が大きいということです。

亜鉛はイオン化傾向が大きく希硫酸と反応します。

なので電解液の希硫酸に亜鉛板を浸しておくだけで亜鉛が溶け出してしまいます。

負極で直接反応が起こってしまう

次に2つ目の問題です。

反応式のところでも述べたとおり、ボルタ電池内部で起こる反応はつまるところ亜鉛と希硫酸中の水素イオンとの反応(全体の反応式で示した反応)です。

なのでわざわざ負極から正極へ銅線で電子を運ばなくても、亜鉛板の表面で亜鉛と水素イオンは直接電子のやり取りをすることができます

希硫酸中のすべての水素イオンが亜鉛板付近にあるわけではないので、すべての水素イオンが亜鉛板表面で還元されるわけではありませんが、いずれにせよ銅線を流れる電気量は減ってしまいます。

分極が大きい

3つ目、そしてボルタ電池の最大の問題点は分極が大きいという点です。

電気化学における分極とは、簡単に説明すると、正極でわずかに起こる逆反応が電子を負極側へ戻そうとし、起電力(電圧)が低下する現象です。

ボルタ電池の場合、正極で発生した気体の水素は銅板上にとどまり、すきあらば水素イオンに戻ろうとします。

(新たな水素イオンが電子を受け取りにくるのを阻害するとイメージしても良いと思います。)

このような作用により起電力が下がってしまうのです(=分極)。

ボルタ電池の問題点を解消するには

ボルタ電池のこれらの問題点を解消するために、以下の試みが考えられてきました。

減極剤を加える

ボルタ電池最大の弱点である大きい分極を抑えるための有効な手段は、過酸化水素などの酸化剤を正極側に入れることです。

つまり水素イオンの代わりに別の酸化剤に正極で電子を受け取ってもらおうという考えです。

このように分極を減少させるために加える酸化剤もしくは還元剤を減極剤と言います。

(分極が負極側に起因する場合は負極側に還元剤を加えます。)

<メモ>
減極剤として加える酸化剤の役割を、銅板上の水素を酸化して水素イオンに戻して銅板を開放するため、と説明している本やサイトもあるでしょう。
もちろんそのような効果もあるとは思いますが、普通に考えれば、わざわざ水素と反応せずに銅線から流れてくる電子を受け取ると見る方が自然です。

さて、減極剤を加えれば確かに分極は改善できますが、まだまだ問題は山積みです。

上で述べた残り2つの問題点、つまり「腐食」と「亜鉛板上での直接反応」の解決にはなりません。

またそもそも負極側と正極側はセパレートされていないので、加えた減極剤も負極側まで拡散していき、亜鉛板表面で直接、酸化還元反応を起こす可能性があります。

といったことを総合的に考えると、ボルタ電池の構造のまま、すべての問題点を解消するのは不可能です。

ボルタ電池を改良したのがダニエル電池

そこで考案されたのが、かの有名なダニエル電池です。

ダニエル電池では電解液に硫酸塩水溶液を用いることで腐食を抑え、さらに素焼き板で負極側と正極側を隔てることで「直接反応」を避けて電子の銅線のとおりを良くします。

さらに正極側活物質として水素イオンよりもイオン化傾向の小さい(還元されやすい)銅イオンを反応させることで、水素の発生を防ぎます。

といった具合に、ダニエル電池はボルタ電池の弱点を一掃した画期的な電池なのです。

なお、ダニエル電池についてさらに詳しくは次の記事を読んでいただければと思います。

素焼き板の2つの役割、起電力の向上の仕方、充電不可の理由、など入試でも良く聞かれる内容についてじっくり解説しています。

まとめ

ここまでお疲れさまでした。

最後にまとめです。

電池の先駆けボルタ電池ですが、多くの問題点があることを理解しておく必要があります。

構造と起こる反応は電池式で押さえておき、問題点については特に重大な、分極を覚えておくと良いでしょう。

次のように単語カードにまとめてみました。

ボルタ電池のポイントまとめ(1)

ボルタ電池のポイントまとめ(2)

今回はここまでです。

この記事の内容が少しでも皆さんの参考になれば幸いです。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!